赴任地の県内2校でボクシング部を立ち上げた森田隆宏。「佐賀で教員となった教え子が率いるチームと競い合ってレベルアップしたい」と夢を語る=大町町の白石高商業科キャンパス

 大町町の小高い丘の上。木々に囲まれた白石高商業科キャンパス(旧杵島商高)の武道場では、若楠国体で使われたリングが今も現役で使われる。室内にはボクシング部員がミットを打つ空気を切り裂くような音や、気合を込めた呼吸音が響き合う。創部は2009年。今も監督を務める森田隆宏(61)が赴任早々に立ち上げた。「ボクシングに興味を持った高校生が集まる拠点をつくりたかった。そうすることで競技の裾野が広がると思った」

 森田は前任地の鳥栖商高でも同好会を組織し、01年に部に昇格させた。どちらも最初は倉庫や空き教室からのスタート。リングもなく、部員集めにも奔走したが、「苦しいと思ったことはなかった」と振り返る。

ボクシング部を立ち上げた鳥栖商高で空き教室を使って指導する森田隆宏監督(2007年)

 佐賀市で育った森田がボクシングと出会ったのは、佐賀商高1年が終わりかけのころ。「自分に向いているかも」と、県内の高校ボクシングの拠点だった県総合運動場ボクシング場(当時)の門をたたいた。そこで1971年の若楠国体以来、選手や指導者として佐賀のボクシング界をけん引した山口正一と出会った。