巣から降り立った雄の「しろ」(奥)と雌の「かのん」(白石町教育委員会提供)

 白石町で生まれ九州で初めて巣立ちが確認された2羽のコウノトリの愛称が14日、雄は「しろ」、雌は「かのん」に決まった。町名とコウノトリのきれいな白色や、巣がある遠江の新観音(しんかんのん)地区に由来する。

 町民195人が雄に192件、雌に194件の愛称を寄せ、選考委員会が選んだ。町役場で発表した田島健一町長は「豊かな自然と餌がある白石の住み心地がよかったのだろう。次の世代にも命のバトンをつないでほしい」と喜んだ。コウノトリが生まれ育つ自然環境をアピールしていく。

 町は観察時の留意点として「路上駐車をしない」「水田や私有地に立ち入らない」「観察・撮影は150メートル以上離れ、フラッシュは使わない」「餌を与えない」ことを呼びかけている。望遠鏡や双眼鏡があればより楽しめる。(小野靖久)

■生誕地“帰郷”のケース少なく

 白石町の2羽のコウノトリはこれからどう育つのか。生態に詳しい兵庫県立コウノトリの郷公園は「すぐにいなくなったり、すみ着いたり、環境や個体によってさまざま」とする。親鳥は来年も町内で産卵する可能性が高い。

 多くのひなは巣立った後に親鳥と暮らすが、すぐ親離れする場合もある。「1カ月ほど一緒にいることが多い」(同公園)という。親離れした後は餌を求めて移動を重ねる。生後1年の生存率は6割程度。鳥獣対策のネットに絡まるケースや電線への衝突、感電などで命を落とすことがある。

 3歳で成鳥になり、繁殖を始める。移動範囲は主に国内で、韓国や中国、台湾で確認されることも。生誕地に戻ることは少ない。親鳥は繁殖に同じ場所を選ぶことが多い。(小野靖久)