オニユリの花と、吸蜜に訪れたナガサキアゲハ 撮影・小松常光

 花にはさまざまな昆虫が訪れるが、アゲハチョウの仲間ほどその様子が絵になるものはいないだろう。

 植物はきれいな花を咲かせて昆虫を呼び寄せ、蜜などを与える見返りに花粉を運んでもらっている。ところが、チョウの仲間は、頻繁に花を訪れる割には花粉の運搬にあまり貢献していないとされる。ハナバチやハナアブなど、花を訪れる他の昆虫に比べて、チョウの仲間は脚が長く、ストロー状の長い口器を用いて蜜を吸うため、おしべの花粉が体に付着しにくいのだ。

 しかしながら、一部の植物は、チョウの仲間に花粉を運んでもらいやすい形状の花を咲かせる。例えば、ユリやツツジの仲間に見られるように、大きなラッパ状で、おしべやめしべが著しく伸びているような花である。これにより、チョウの体に花粉を付着させることが可能となる。

 また、チョウが花粉を運ぶ花には、オレンジ色や赤っぽい色のものがよく見られる。多くの昆虫は赤い波長の光が見えていないと考えられるが、チョウの仲間は例外的に、赤色を認識することができるためだろう。

 写真のオニユリは、チョウに花粉を運んでもらう花の典型例であり、吸蜜に訪れたナガサキアゲハのメス成虫の翅(はね)に、真っ赤な花粉が多数付着しているのがよく分かる。

 なお、オニユリは、ほとんどが三倍体であり、正常な精細胞や卵細胞ができないため、せっかく花粉が運ばれても種子は実らないそうだが、対馬や九州北部の一部の地域では、正常な種子ができる二倍体も見られるという。

 この写真のオニユリは、はたして無事に種子を実らせることができるのだろうか。(佐賀大農学部教授・徳田誠)