個性ある8つのバーを楽しもう!

 ある一定以上の年齢層の人に嬉野温泉のイメージを聞くと「夜の街」と答える方が多いのではないだろうか。戦後の高度経済成長とともに、嬉野温泉は歓楽温泉街として栄えた。宿泊客も団体や男性グループがほとんどで、旅館で芸者をあげてどんちゃん騒ぎをした後、浴衣姿で夜の街へ繰り出す。そんな旅行が主流だった。旅館の周りにはスナックやキャバレー、ストリップ劇場など夜のコンテンツもたくさんあり、町は大いににぎわった。

 その後、日本経済が浮かれていた時代は終わり、団体旅行が少数派となった。それに比例して、時代のニーズに応え続けた温泉街はかつてのようなにぎわいはなくなった。だからといって、夜の街が悪いわけではない。近年、ナイトタイムエコノミー(夜間経済活動)の重要性を唱える有識者が増えている。夜のコンテンツが活性化することで、来訪者の滞在時間も延び、地域内消費が増える。観光庁もナイトタイムエコノミーの推進に力を入れているほどで、やはり地域経済にとっても大事なコンテンツなのだ。

 令和になった今、私がお勧めする嬉野温泉街の夜の楽しみ方は“バー巡り”だ。現在、温泉街の中には8軒のバーがある。ピザやパスタなどフードメニューが充実していてレストラン感覚で利用できる「BAR IDEA」。オーセンティックバーとして本格的なカクテルや洋酒を楽しめ、マスター手作りの焼きチーズキーマカレーも人気の「Bar&Cafe Y」。超隠れ家的でアナログレコードの音を楽しみながら焼酎や日本酒を楽しめる「Jazz Spot 赤い橋」。温泉街にはこの3つのバーがそれぞれ徒歩圏内にある。

 バーがある旅館も増えている。和多屋別荘には茶生産者である副島園が運営するお茶をテーマにした「副島園 the bar」。見た目も味も美しい茶ビールは絶品だ。和楽園には移住者でありながら茶農家になり活動の幅を広げている茶屋二郎の「Chaya Jiro the BAR」がある。吉田屋には足湯席がある「クロニクルテラス」というバーは若い女性に人気だ。ハミルトン宇礼志野にはウッド調の内装が印象的で本格的なオーセンティックバー。また大村屋にはハイエンドオーディオで音楽やワインやフレッシュフルーツカクテルが楽しめる「Music Bar OOMURAYA」。いずれのお店も宿泊者だけなく、外来も受け付けている。

 小さい温泉街ながら8軒のバーが楽しめる嬉野。市民の皆さまはぜひ自分の町にこれだけのバーがある豊かさを享受していただきたい。また、市外の皆さまも泊まりがけで新しい嬉野の夜の過ごし方をお楽しみください。

北川健太(嬉野温泉・旅館大村屋15代目)