バレーボール女子・Vリーグ1部(V1)の久光スプリングス(鳥栖市)で活躍した石井優希(32)がユニフォームを脱いだ。久光一筋13年間の現役生活に終止符を打ち、今後はチームと専属マネジメント契約を結んで活動していくという。選手時代の涙の理由、後輩たちへのエール、佐賀へのまなざし、これからの方向性、そしてバレーボールへの思い…。次のステージ進む石井が20日の会見で語った言葉を紹介する。(構成・小部亮介)

久光・石井

スパイクを放つ石井優希=2023年1月久光-埼玉上尾

 ―現役を終え、専属マネジメント契約を結んだ。今の気持ちは。

 Vリーグ最後の試合になった(ファイナルステージの)東レアローズ戦から2カ月、この体育館(サロンパスアリーナ)で引退試合を開いてもらってから約1カ月がたった。私自身としては、本当にやり切った気持ちがすごく大きくて、今は晴れやかな気持ちで日々過ごしている。

 小学2年からバレーボールを始め、本当に多くの人に支えられて久光に入ってからも、家族やチームメート、ファンやスポンサーのみなさまに支えられて、24年間の現役(バレーボール人生)を終えることができた。
 現役生活は楽しいことばかりではなく、苦しいことが本当に多くて、悩むことが多かったが、現役の最後を久光で終えられてすごく幸せだと感じている。久光は今年から拠点を移して新たなスタートを切るので、そのお手伝いというか、私自身も新たなステージでバレーボール界やスポーツ界に恩返しできればいいなと思っている。
 仕事に関しては、具体的に「こういう仕事をしたい」というのは決まってはいないが、いろんな仕事に取り組みながら自分の可能性を広げていきたい。

 ―現役時代の苦しかったことや楽しかったことは。

 中田(久美)前監督が就任してから毎日の練習が苦しくて、すごく追い込まれていた。(サーブレシーブなど)自分がたくさん狙われて、自分の調子次第でチームの勝ち負けがついていた。自分さえ頑張ればチームが勝つと思って練習をしていた時期もあった。本当に苦しかったけど、結果がついてきていたので、その瞬間はやっぱりバレーは楽しいと思っていた。
 いまの酒井(新悟)監督は選手ファーストで、私の年齢も上の方だったので、より自分たちで考えて結果を出していかないといけなかった。ただ、7、8位が続いたときはしんどくて、私自身も東京五輪を控えていたので、私の今後のバレー人生をどうするべきか悩んだ。タイトルを取ってきた裏にはやっぱりきついことが多かった。

 ―コート上での笑顔が絶えなかっただけではなく、数々の涙が印象的だった。特に現役最後の公式戦になった試合での涙が印象的だった。石井さんの中で印象に残っている涙は。

 これも絞りきれないけど、中田前監督のときのリーグ3連覇が懸かった試合の決勝。敗れたんですけど、その試合は本当に私のサーブレシーブが返らずに足だけを引っ張って負けてしまったので申し訳なさがあった。
 自分がキャプテンを経験した年も3連覇が懸かっていたので、チームを勝たせられないとか、自分のコンディションも全然だめだったし、チームもまとめることができなくて、キャプテンとしての仕事を果たせなかったシーズンがずっとだった。引退の試合の涙はうれしさがこもった涙です。

 ―13年間所属した後もチームに残れることについて。

 久光の会社に感謝していて、本当に恵まれた環境。温かい方々が多いので、現役を終えた後でも職を失わずに、また支えてもらいながら仕事ができることはうれしい。

 ―鳥栖市を練習拠点に移した。来季に臨む仲間に期待したいことは。

 もう一度、世界を目指してほしい。どのチームよりも一人一人の能力が高い選手が集まっていると思う。スタッフを含めたチーム力を磨いていってほしい。

ファイナル4最終戦で東レに勝利した久光
現役引退の石井らを囲み笑顔で記念写真に収まった

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VNLを見て

 ―早速、バレーボールのネーションズリーグ(VNL)で解説をした。その感想は。

 初めての解説の仕事だった。元々しゃべることが得意ではなかったので、解説は向いていないと思いながら仕事をいただいて、挑戦してみて難しかった。一緒に解説してくれた狩野(舞子)さんやアナウンサーにはすごく迷惑をかけた。ただ、周りの方には「初めてにしてはよかったよ」と声をかけてもらったことが唯一の救いだった。

 ―VNLは9月、世界最終予選が行われる。今の日本代表を見てどう思うか。

 私が日本代表にいた約10年間と比べてもクオリティーがすごく高い。可能性がすごくあるチーム。ネーションズリーグ中は、1試合1試合でランキングが変動するのは大変だが、いろんなメンバーが使われていて、若い選手が多いので今後が楽しみ。9月のパリ五輪予選の(パリ行きの)チケットを獲得できるように頑張ってほしい。

 ―VNLで活躍する西村(弥菜美)選手、荒木(彩花)選手について。

 西村と荒木は初代表だけどスタートで頑張っていて、久光出身なのでひいき目で見てしまう。一緒に頑張っていたメンバーが日本を背負って活躍している姿はほほえましいというか、うれしい気持ちになっている。名古屋ラウンドのときに、解説をした後に2人と話しをして、2人とも「緊張する」と言っていたが、その緊張が分からないくらい堂々とプレーしていたので今後も楽しみ。

 長岡望悠はまだユニホームを着られていないけど、今後絶対に長岡が必要なときがくると思う。(久光の)同期として誰よりも応援しているし、日の丸を背負って活躍している姿をまた見たいと思っている。

2020年10月18日 久光スプリングス―JTマーヴェラス
試合後、同期の長岡望悠と会見に臨んだ石井優希