佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備計画で、新駐屯地の建設工事が始まった12日、計画への賛否に関わらず住民からは通学路の安全や生活環境への影響を懸念する声が上がった。計画は工事段階に入り、地域は新たな課題を抱える。
午後3時半ごろ、空港西側の駐屯地予定地にプレハブやパイロンなどの資材を積んだトラックが次々と入り、作業員ら約30人が降り立った。15分ほどで県道と用地の境界にバリケードが組まれ、「立ち入り禁止」の工事看板を設置した。現場では、計画に反対する市民らが抗議の横断幕などを掲げた。
「やっと始まったかという思い」。計画に賛成の立場を取ってきた県有明海漁協南川副支所の漁業者中島浩徳さん(61)は、そう受け止めた。「事故がないようにしてほしい」。特に通学路の安全確保を望み、「配置する誘導員が十分か、土砂運搬が始まったら確認したい」と語った。
計画に反対する同支所の70代男性は「突貫工事」によるリスクを懸念する。「余裕なく進めることで仕事が乱雑になる。九州防衛局は説明会で何度も誠心誠意取り組むと言ってきたが、住民の不安に応えず口先だけだった」と批判した。
住民説明会で通学路の安全確保を訴えた山田正彦・東与賀小PTA会長(48)は「不安なまま決行か…」と落胆した。説明会で十分な回答がないままの着工に「無視されたように感じる」。計画に「反対ではない」としつつ、今後も子どもたちの安全を求めていく。
地元で生活環境への影響に懸念があることに関し、山口祥義知事は記者団に「昨今の安全保障上の要請から、できるだけ早く工事を進めたい思いは分かる」と防衛省に理解を示す。その上で「防衛省は『周辺環境にできるだけ配慮する』と言っている。『配慮する』というのがどの程度のものかを考えなければならないので、今の時点で県から申し入れることは考えていない」と述べた。
坂井英隆佐賀市長は「市民の安心・安全な生活が確保できるよう、必要な対策と配慮を改めて求めてまいります」などとするコメントを発表した。(取材班)