1988年のデビュー作「そして夜は甦る」から、遺作となったシリーズ第5作「それまでの明日」まで、全ての出版を手がけてきた早川書房(東京)。訃報を受けて急きょ、7月25日発売の「ミステリマガジン9月号」で追悼特集を組むことを決めた。
14年間にわたって原さんを担当した編集者の千田宏之さんは「遺作となった前作の途中から担当を引き継いだ。次の作品こそ、原さんと二人三脚でゼロから作り上げるはずだったのに」と声を落とす。
遅筆で知られ、シリーズを追うごとに出版の間隔は7年、9年、14年と開いていった。遺作となった「それまでの明日」は青年・海津を巡る物語で、原さんは続編を含めた2部作として構想していた。
ラストは東日本大震災に遭遇する場面で、千田さんは「あの続きから、どうにか数章分は書き上げたが、ある時点で筆が止まってしまった。もっと面白くしたいという、プレッシャーがあった」と、読者の期待を裏切るまいと苦悩していた原さんの様子を明かす。
手元には冒頭の数章分だけの原稿が残された。千田さんは「この原稿に原さんは、もっと肉付けしたり、推敲(すいこう)したりしかったはずだから」と思いを巡らせている。(古賀史生)