鳥インフルエンザ拡大による鶏卵の供給不足の状態が続き、佐賀県内でも鶏肉・卵関連の商品が製造中止に追い込まれたり、代替の新商品を開発したり、事業者は対応に追われている。
伊万里市や佐賀市、福岡県内で鶏肉料理専門店を展開する「ドライブイン鳥」は3月、業者から卵液を納入できないと報告を受けた。このため人気のフリーズドライ商品「鳥スープ」の製造を4月から中断している。再開は秋以降の見通し。県内では品切れして商品が並ばない店も出てきた。有浦定幸社長(55)は「予想していなかった。力を入れて売り出し、やっと取引先が広がってきた矢先に」と肩を落とす。
人件費や光熱費のほか、店頭メニュー用に仕入れる卵や鶏肉も断続的に値上がりしている。客離れを案じて店頭メニューは据え置いたままだ。有浦社長は「コストばかりが膨らむ。近いうちに値上げをしないと苦しくなるばかり」とこぼす。
農林水産省によると、ブロイラーの卸売価格(むね肉中値・東京都)は、1キロ当たり422円(5月2日時点)で、前年5月の中値の月別平均326円と比べて96円増。比較可能な2000年以降で、昨年までの過去最高は12月(月平均)の421円、今年の1月に再び過去最高を更新して同428円となっている。
JA全農たまごによると鶏卵の3、4月の卸売価格(福岡地区、Mサイズ基準値)の月平均は345円で、比較可能な1993年以降で最高値を更新。農水省は1月、業界団体に鶏卵の安定供給を要請し、家庭向けを優先するよう求めた。
卵の高騰に押される中、創業1892年の老舗駅弁店「中央軒」(鳥栖市)は、錦糸卵の代わりにトウモロコシで彩った新商品「錦糸卵が無くなった場合のかしわめし」を4月から発売した。
鳥インフルエンザによる卵不足の影響で、3月に仕入れ先のメーカーから発注量を3割減らしてほしいとの相談を受けたのがきっかけ。児玉隆二社長(40)は「状況が悪化すれば伝統の『かしわめし』が作れなくなるのでは」と対策を練った。錦糸卵の黄色からコーンバターを参考に代替案として新商品を考案した。
鶏が泣きながらトウモロコシを食べ「ヒヨコが大きくなるまで待っててね」と言わんばかりのパッケージイラストもすぐに浮かんだ。当初は製造への影響が出てから売り出すつもりだったが、企画が面白く、「くすりと笑ってもらえたら」との思いで販売を決めた。不安をそのままネーミングに代えた商品はツイッターで話題となり、県外からも弁当を目当てに客が訪れ、弁当自体の売り上げはコロナ前を上回っている。
同社はコロナ禍、売り上げが8~9割減と急激に落ち込んだ。「お客さんに支えてもらった」と児玉社長。「大変だと落ち込むより、人生、仕事を楽しみたい。いろんな形で感謝を伝えられたら」と新商品への思いを語る。本店、鳥栖駅、新鳥栖駅の3カ所限定で販売。価格は740円。問い合わせは中央軒、電話0942(82)3166。(志波知佳)