室町時代の絵巻物に描かれた十二支の動物たちを、佐賀市出身の立体造形・版画作家の三浦史明さん(62)=千葉県佐倉市=が、12年かけて版画に復元した。擬人化した動物からは人間味があふれ、いきいきとした表情でユーモラスに描かれている。
えとに合わせて年賀状として年に1枚ずつ発表してきた版画に解説本を加え、金属のレリーフで飾った自作の箱に収めた私家版「十二類合戦絵巻 木版画年賀状」15セットを制作した。
「十二類合戦絵巻」は、15世紀に作られた御伽草子(おとぎぞうし)絵巻の一種。えとの動物たちが歌会を開くが、判定役に名乗り出たタヌキが外されたのを恨んで、キツネやクマなどを誘って十二支に夜討ちをかける物語となっている。
最初に制作した2011年の卯(う)年の作品は、ウサギが刀を抜いてタヌキを追い払ったり、酒宴でくつろいだりする姿をカラフルに刷り上げた。三浦さんは返り討ちに遭った後に出家したものの、最後まで煩悩から逃れられないタヌキに共感を覚えるという。版画の題材は、えとの動物と、タヌキが絡む場面から選んだ。
三浦さんは佐賀西高-東京造形大美術学科を卒業後、ニューヨークなどで作品を発表してきた。現在は佐倉市に工房を構えている。
制作した15セットのうちの一つは佐賀県立図書館(佐賀市)に寄贈した。残りは1セット10万円で販売する。問い合わせは「Gallery & 工房M」、電話070(3307)7530。(古賀史生)