江戸時代後期に小城藩医が著した和学の手引書『和学知辺草わがくしるべぐさ』を、佐賀大の中尾友香梨教授らの研究会が初めて活字化し、現代語訳を加えて出版した。成立は国学者の賀茂真淵や本居宣長らが相次いで和学の手引書を出版した時期に当たる。
宣長の『うひ山ぶみ』は、古事記や万葉集など日本の古典を重視する国学の在り方を論じて、儒学など漢学が主流の学問風潮に一石を投じた。今回の『和学知辺草』は、うひ山ぶみよりも5年早い成立で、当時最先端の知識をふんだんに盛り込んで分量も3倍近い。中尾教授は「うひ山ぶみに匹敵する内容を備えており、埋もれていた、もう一つの『うひ山ぶみ』が見つかったと言える」と評価している。
『和学知辺草』は原本が散逸しているが、1793(寛政5)年の成立で写本が「小城鍋島文庫」に収められていた。上中下3巻全50章にわたって、歴史や言語、文字、音韻、歌、制度史、神道、儒学、漢詩などを取り上げている。