しし座の心臓の位置にある一等星レグルスは「小さな王様」の意味があり、固有名レグルスの表記は1522年に初めて登場しました。かのコペルニクス(1473-1543)が地動説を主張した「天球の回転について(1543年)」の中に、これを引用してレグルスの名称が記されています。固有名は異なりますが、紀元前10世紀頃の古代シュメール・バビロニア時代からほぼ同じ意味の名称で呼ばれており、時代を下った古代ギリシア,古代ローマでも「王の星」でした。古代ギリシア末期のアレキサンダー大王はしし座の元に生まれたと伝わっており、大王の名を冠したエジプトの都市アレクサンドリア・カノピックの道路はレグルスの昇る方向とよく一致しているそうです。
レグルスは他の根拠からも、アルデバラン(おうし座)、アンタレス(さそり座)、フォーマルハウト(みなみのうお座)とともに、「ロイヤルスター」と呼ばれていました。これは、紀元前3000年頃の昔、古代ペルシア(現在のイラン付近)では、この4つの一等星が黄道に近いところで全天をちょうど4等分する位置にあることから、天空がこれらの星によって守られていると信じていたためです。彼らは、4星が善悪双方の力を持っていると考え、将来の吉凶を占うために月や惑星とこれらの星の天体観測をしていました。
ライオンといえば百獣の王。一等星レグルスもそれにふさわしい由来を持っています。春は、しし座とともに皇帝の星が雄々しく空に舞っています。
文:早水勉(佐賀市星空学習館副館長)
イラスト: 河塚彩和(佐賀市星空学習館)
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