国が本年度から撤去作業に着手する、神埼郡吉野ヶ里町の山中に埋設された猛毒のダイオキシンを含む除草剤「2・4・5・T剤」に関し、林野庁は掘削や高温焼却による無害化に複数年を要するとの見通しを明らかにした。処理量が多いため、施設の受け入れ能力に応じた時間がかかるとしている。
林野庁が27日、2021年度に実施した吉野ヶ里町を含むモデル地区の調査・検討結果や今後の対応について公表した。
報告書によると、吉野ヶ里町に埋設された945キロの除草剤に関しては、基準値の5・3倍~9・6倍となる高濃度のダイオキシン類が検出された。今後は周辺をテントで覆うなど飛散防止措置を講じた上で、コンクリートで固められた除草剤を掘り出し、こぶし大に砕いてドラム缶に詰める。処理施設に運び、ダイオキシンが無害化される高温で焼却処理する。
林野庁国有林野部業務課は「処理業務に関する入札の準備を進め、なるべく早く作業に着手できるようにしたい」と話す。処理施設は民間施設を想定しており、施設側や立地する自治体と事前協議も必要になるという。
除草剤は、1960年代後半から国有林の雑草を駆除する目的で散布された。不純物として猛毒のダイオキシン類が含まれる可能性があったため、国は71年に使用を中止。当時は無害化する処理技術が確立されておらず、セメントなどと混ぜ合わせて15道県の計46カ所の山林に埋設処理された。(大橋諒)