佐賀県沖の有明海の養殖ノリ不作の問題を巡り、農林水産省の野中厚副大臣は10日、有明海特別措置法22条に基づく救済に関し「今季のノリの生産はほぼ終了し、22条を発動するような状況には至らなかった」と述べ、実施しない考えを示した。佐賀、福岡、熊本、長崎の沿岸4県の状況を確認し、生産金額の落ち込みが著しいとは言えないと判断した。
衆議院の決算行政監視委員会で、立憲民主党の原口一博衆院議員(佐賀1区)が質問した。原口氏はアサリやタイラギなどの二枚貝について「回復の兆しがある」とした農水省側の見解に対し「(貝の)幼生が増えても、ちゃんと売れる貝まで育たないから困っている。認識がずれている」と批判した。その上で有明海特措法に基づく損失補塡(ほてん)について政府の見解をただした。
特措法22条は「著しい漁業被害が発生した場合に、必要な損失補填に努めなければならない」と定める。野中氏は「著しい漁業被害とは、被害が複数県におよぶなど広域的、かつ被害額が甚大なものと認識している」と農水省が想定する適用の条件を初めて示した上で、今季は要件を満たしていないとの認識を示した。
水産庁漁場資源課によると、ほぼ9回目までのノリの入札会が終わったことから判断した。沿岸4県の養殖ノリの今季の生産金額は、2017~21年度までの過去5年間平均と比べ8割を超えており、「過去10年間をさかのぼると、今季以上に生産金額が低い場合もある。(今季が)著しい被害とは言えない」(同課)と結論づけたという。
有明海特措法22条の適用を巡っては、国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門を求める漁業者と弁護団が3月、ノリ不作に対し、22条を適用した緊急救済の実施を求めていた。(大橋諒)