北斗七星はおおぐま座の一部で、北斗の柄の部分が大きな熊の尻尾になっています。おおぐま座とこぐま座には、悲しいギリシア神話があります。そのあらすじを紹介しましょう。
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森の妖精カリストは、大神ゼウスに愛されてアルカスを産みました。ところが、カリストの主人アルテミスは処女神だったために、カリストを罰して熊の姿に変えました。アルカスは他の女神に育てられ立派な狩人に成長しました。
ある時、アルカスが森で狩りをしていると、見事な大熊に出会いました。その大熊こそ母カリストでした。カリストはいとおしいわが子を抱きしめようと駆け寄りました。しかし、それとは分からないアルカスは母に向けて弓を放とうとしました。それを天から見ていたゼウスは、罪をさせぬように2人をさらって天に上げて星座にしました。
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さて、星座絵を見ると、この大熊と子熊の尻尾はやけに長いことに気づくことでしょう。現在の多くの星座の解説書には、「これはゼウスが大熊小熊の尻尾をつかんで天にほうりあげたから」と記されています。しかし、古典のギリシア神話にはそんな話はどこにも記されていません。
ガリレオと同時期の数学者トーマス・フッド(1556―1620 英)は、学生から奇妙に尾の長い星座の熊について問われ、ジョークで「熊はとても重いし地上から天までは遠いから、ゼウスが熊を天に引っ張り上げたときに、尾が伸びてしまったのさ! これ以外に理由は知らないよ」と言ったことが始まりです。
(佐賀市星空学習館副館長 早水勉)
イラスト:河塚彩和(星空学習館)