豊臣秀吉が茶会や能を通して大名と文化交流を重ねた唐津市の名護屋城跡一帯で26日、「名護屋城大茶会」が開かれた。名護屋城博物館に常設展示している「黄金の茶室」では、当選した来場者が一服。茶道団体による呈茶席や、野点(のだて)の体験、伝統芸能の披露もあり、桜が咲き誇る中、多くの来場者が往時のにぎわいを堪能した。(文・松岡蒼大、写真・米倉義房)
名護屋城博物館は26日、名護屋城大茶会の開催に合わせ、整備が完了した「上山里丸(かみやまざとまる)草庵茶室跡」を公開した。建物跡と路地跡を平面的に表示し、見学者は「わび・さび」の茶室の姿に想像を膨らませた。
県は1996年度から3年間、豊臣秀吉の居館があった上山里丸の発掘調査を実施した。草庵茶室と想定される掘立柱(ほったてばしら)の建物跡、周囲に井戸、飛び石などを含む路地の跡を確認した。その成果をもとに、2019年度から4年間、建物跡と路地跡を平面的に表示する整備を行った。
跡全体は南北約30メートル、東西約15メートル。茶室跡は地面に掘られた穴を結ぶと4畳半規模とみられ、垣根跡などと合わせてモルタルで分かりやすく表示した。秀吉の茶会に参加した博多の豪商・神屋宗湛(そうたん)の『宗湛日記』には草庵茶室について「柱もその外みな竹なり」と書き残している。
現地説明を行った同博物館の大橋正浩主査は「秀吉の茶室で分かっているものは全国的にもなく、大変貴重な遺構」と解説した。県は23年度、博物館での展示に向けた本格的な復元に取り組み、見学者から「ここに建物があるのを見るのが楽しみ」との声が上がっていた。