農政を2年間担当した約10年前と比べると、書く記事に明確な違いがあることに気づいた。当時は「農業、地域を守る」という話が多かった。この1年を振り返ると、「どう収入を増やすか」というものをよく書いている。

 何が背景にあるのか。一つは資材高騰だろう。燃料や肥料、飼料などが値上がりする中、売り上げをどう確保するかは、10年前とは比べものにならないほど切実さを増している。

 もう一つは異常気象があると思う。寒くない冬、雨不足…。極端な天気を目の当たりにするのが当たり前になっている。取材したノリ漁業者は「冬が遅く、春が早く来た。水温が下がらないから病気がまん延し、量が採れない」とこぼしていた。春に出ていた植物プランクトンが真冬に出るなどして赤潮が頻発し、栄養塩が確保できずに不作に悩まされた。

 結局のところ第1次産業は天気が安定しないことには収量が見込めない。想定外に対応しなければならない大変さを思う。

 3月末で農政を離れることになり、そうした声を十分に伝えられたか心残りだ。わずか1年だが、色んな方にお世話になった。お礼を申し上げたい。(大田浩司)