4年ぶりの通常開催となった大会に笑顔で臨むランナーたち=佐賀市のSAGAサンライズパーク周辺(撮影・小部亮介)

沿道にもスティックバルーンを持って応援する人の姿が戻り、それに応えるランナーも見られた=神埼市神埼町(撮影・山田宏一郎)

 「人が多く集まる大会を待っていた」「仲間の大切さ感じた」-。4年ぶりの通常開催を待ち望んだ全国各地のランナーが、19日の「さが桜マラソン2023」で春の肥前路を駆け抜けた。約8千人がそれぞれの思いを胸に抱き、コロナ禍で忘れかけていた仲間との絆や走る喜びを思い出す一日となった。

 「会えてよかった」。仲間との再会に、長崎市の上田佳代さん(42)=藤津郡太良町出身=は目を潤ませた。これまでは太良町のランニングチームの一員として大会に参加してきたが、コロナ禍でいつもの仲間と会うのも4年ぶりだった。最後は手をつないでゴールし「かけがえのない仲間の大切さを改めて知ることができた」。2年後にホノルルマラソンでハーフを走る約束をして会場を後にした。

 遠方からも多くのランナーが集った。札幌市の中村仁さん(71)は暑さの影響で、レース序盤から調子が上がらなかった。「いけるところまで行こう」と足を進めたが、25キロ付近でリタイアした。悔しさは残ったが「沿道の声援は北海道より大きくて素晴らしかった。またチャレンジしたい」。レース後は見守ってくれた妻と嬉野温泉で疲れを癒やした。

 沖縄県から参加した佐賀市三瀬村出身の山本小百合さん(40)は「麦畑の鮮やかな緑に感動し、ぷっくぷくの桜のつぼみにエネルギーをもらった」と沖縄では見られない佐賀の春を満喫した。以前はマラソン中心の生活で、2020年は3時間半以内を目標に調整しながら中止に。その後は妊活に集中すると決めていた。あれから3年。2歳の長女・莉々りりちゃんが沿道で応援した今回は「時計を気にしないマラソンの楽しみ方に気付かされた」。

 ゴール後の芝生には全力で走り切って倒れ込む選手や久しぶりの再会に会話を弾ませるランナーの姿が多く見られた。「人が集まる、こういうのを待ってた。4年前に戻ったような感じ」。佐賀市の谷本大輔さん(49)はゴール後の周囲を見渡した。たくさんの人と走るマラソンを楽しみに、過去2年間のオンライン大会の出場を見送った。「練習不足」と書かれたTシャツを着て臨み、「楽しんで完走することができた」。徐々に戻ってきた“日常”をかみしめていた。(小部亮介、宮﨑勝)