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老人施設火災 老後の困窮浮き彫りに(3月24日付)

 群馬県の老人施設「たまゆら」で、入居者10人が亡くなる痛ましい火災事故があった。施設は県に有料老人ホームとしての届けを出しておらず、スプリンクラーや火災報知器などの安全装置も備えていなかった。入居していた人たちの大半が生活保護を受けており、困窮した高齢者がこうした無届けの施設で生活せざるを得ない現状が浮き彫りになった。

 有料老人ホームの開設は、都道府県知事への届け出が必要だ。しかし、厚生労働省によると2007年2月時点で、届け出をしていない高齢者施設は全国31都府県に377あった。佐賀県では19施設が無届けだった。この調査には都道府県でばらつきがあり、実際には全国的に調査に引っかからない施設がもっとあると思われる。

 施設が届け出ない理由は、設備基準や職員数などを満たすためにコストがかかるからだ。「たまゆら」のように生活保護者の受給者が多い施設では、高額の利用料を取ることはできない。生活に困窮する高齢者ほど、設備の悪い施設に入らざるを得ない状況にある。

 東京都墨田区の保護課は、区の生活保護を受けている15人をこの施設に紹介。うち13人が火災当時、現場にいた。保護課長は「身寄りがなかったり生活保護を受けている高齢者は、ほかの施設は受け入れに難色を示す。こうした施設に頼るしかない」と苦悩をにじませる。

 出火当時、施設には入所者16人がいたが、職員は女性1人だけだった。体の不自由なお年寄り全員を1人で移動させるのは無理だ。施設は増改築を重ねて複雑な構造になっており、壁やベニヤ材など粗雑で燃えやすいものだったという。

 出火の原因は、たばこの不始末の疑いが濃くなっている。施設は禁煙なのに、職員が入所者から金を預かってたばこを買い与え、喫煙を黙認していたようだ。火の始末は本人に任せていた部分もあったという。

 施設の設備、運営のずさんさが目につくが、だからといって無届けの施設をなくせば、身寄りのない生活保護を受けているお年寄りは行き場を失ってしまう。低料金の施設はそのまま残し、設備や職員の補充に行政が関与することを考えたい。

 厚生労働省はこの火事を機に、無届け有料老人ホームの実態把握と防火体制を緊急点検するよう、各都道府県に要請した。画一的な通達でなく、火災などの緊急時に入居者の生命を守るために最低限なくてはならないものは何か。施設ごとに点検し、対策を講じるべきだ。

 高齢化は各都道府県で進行している。2015年には団塊の世代がすべて前期高齢者となる。独り暮らしや認知症の高齢者も増えている。無届けの施設の増加は、急速な高齢者増に施設の数が対応できないでいるからだ。

 北欧は日本に比べ、消費税も高い代わりに高齢者福祉予算が格段に大きい。ホームヘルパーも老人ホームも充実していて、不安のない老後が送れるという。日本も税制を含めて、高齢者福祉の在り方を考え直す時期に来ている。国民全体で、誰もが豊かな老後を送れる社会構築について議論したい。(園田 寛)

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