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映画「この世界の片隅に」 片渕須直監督インタビュー

2017年01月19日 10時43分

インタビューに応じた「この世界の片隅に」の片渕須直監督=佐賀市松原のシアターシエマ
インタビューに応じた「この世界の片隅に」の片渕須直監督=佐賀市松原のシアターシエマ

■「普通」に戻る「希望」描く

 映画「この世界の片隅に」の片渕須直監督(56)が15日、舞台あいさつのため佐賀市のシアターシエマを訪れた。ミニシアターを中心とした上映作品としては異例のヒットを記録している同作について、制作にかけた思いを語った。

■画期的なほどリアル追求

 -こうの史代の漫画が原作だが、読み終わらぬうちに映画化を決めた。

 読み始めてすぐ、「自分の経験が最大限生きる映画になる」と感じた。そこに描かれたことが、すごく大事なことに思えた。一生自分の枕元に置いて、少しずつ読んで理解していく「座右の書」になると。

 -そこまで魅了された理由は。

 戦中・戦前を物語るディテールが何気なく画面端に描かれていて、一つ一つを読み解いていくのが楽しかった。全部分かった時、自分が存在している現在から陸続きの世界として捉えられるのではと思った。

 -リアリティーを追求した表現に引き込まれる。

 登場人物が実在している感覚を観客につかんでほしくて、日本のアニメーションとしては画期的なほど、人物の動きを生々しく、リアルに感じられるところまで持っていった。例えば主人公のすずが、幼少期に風呂敷包みを背負い直す場面がある。「実際にいる人なんだ」と思わせる動きが表現できたから、映画の冒頭から観客がその世界に入っていける。

 -アニメだからこそ描き出せた光景がある。

 すずが住むのは広島県呉市の山腹。家から軍港を望み、戦艦大和も見えれば対空砲火もよく見える。戦争の実情と、主婦として家事を営むすずが、同じ次元のリアリティーで描けると思った。実在しないものを描くのがアニメの力だとすれば、約70年前の戦争は、そうしないと描けないものになってしまっている。

 -戦争が風化しつつある現代で、本作が人々に広まった要因は。

 戦争の時代から長くたったが故に、戦争が遠くなりすぎて、「もう手が届かない」とある種の諦めがあった。でも本作を通じて、「あの時代に自分たちの感性の手が届くんだ」と捉え直してもらえたと思う。そして戦時下でも、生活にささやかな幸せを求めたいという当時の人々の気持ちが新鮮に伝わった。ごく当たり前のことなのにそれが新鮮に映るのは、戦争が断絶した時代だと考えられてしまっていたからではないか。

 -企画を前進させたきっかけに、クラウドファンディングが挙げられる。

 映画は観客が来ることが全てで、来てくれる作品には出資者が現れる。しかし出資者に絵コンテなどで内容を見せても、「映画の面白さと集客力はイコールじゃない」と言われる。観客からすれば、それはイコールではないか。「じゃあ観客に問うてみよう」というのがクラウド-だった。即座に反響があり、こうのさんの原作と僕の組み合わせに期待してくれた人が4千人弱に上った。その結果、すぐ出資者たちの同意を得られ、それから制作にこぎ出すことができた。

 -声優にのんを起用した理由は。

 すずは若く、そしてユーモラスな人。コメディーのセンスを持つ若い女優で、時折すずが見せるナイーブさまで併せ持つ人を探した時、のんの人となりに触れた。すずの飾らない人柄を、彼女の中に感じることができた。

 -映画は、希望を抱かせるラストシーンで締めくくられる。

 そこに感じる「希望」とは、僕らの「普通」と同じところに戻るというだけ。でもそこに希望を感じる、それが大きいのだと思う。終戦日の人々はお昼ご飯をいつ食べたんだろう-といつも考える。悔しいからその日は飯を抜いた人もいるだろうけど、それでもいつかはご飯を食べて、普通に戻る。そして、そこから今日僕らが食べるご飯につながっていくんです。

    ◇   ◇

 映画「この世界の片隅に」はシアターシエマで2月17日まで上映中。2月4日から、109シネマズ佐賀でも上映する。

■音楽担当「コトリンゴ」 2月11日ライブ

 本作の音楽を担当したコトリンゴによる「すずさんとハナウタライブ九州ツアー」佐賀公演が、2月11日午後7時から、佐賀市松原のシアターシエマである。チケットは全席自由・前売りで一般3500円、学生2500円(当日各500円増)。別途1ドリンクオーダーが必要。問い合わせはシエマ、電話0952(27)5116。

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