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第1部 家庭はいま<8>思いやりで家事分担 (10年2月11日)
【写真】慣れた手つきで夕食を作る大坪和明さん

 自宅リビングで小学生の長男と夕食を食べていた藤穂玲奈さん(36)=仮名=は、壁の時計に目をやった。午後8時半。もうすぐ夫(38)が帰ってくる時間だ。

 帰宅後の行動はおおかた察しがつく。ろくに会話もせず夕食を食べ終え、すぐテレビの前に向かうのだ。「せめて『おいしい』の一言があれば」と思う。

恨みに似た感情


 自分で料理上手とは思わないが、「昼間働きながら頑張っているのは認めてほしい」。長男の保育園時代、三食きちんとバランスよく食べさせようと悩んでいた時も、夫は玲奈さんに任せきりだった。最初から炊事の手伝いなどはあきらめていたが、「ただ、一緒に悩んでほしかった」。恨みにも似た感情が、いまも心の奥深くでくすぶる。

 玄関が開く音が聞こえた。玲奈さんは小さくため息をつき、料理の準備のため、いすを立った。

 生活スタイルや家族構成の変化に伴い、急激に変わった家庭の食の風景。「共働きで時間に余裕がない」など、さまざまな課題を乗り越えるには、夫婦での家事分担が欠かせない。

 佐賀県の男性の料理を含む家事参加時間は2001年、1日平均27分で全国43位だった。06年は33分で、順位は46位まで後退したが、09年は36分12秒まで延びた。「男子厨房に入らず」の年配層はともかく、若い世代は料理が好きな男性も多く、夫婦間の意識の変化は進んでいる。

 三養基郡上峰町の団体職員、大坪和明さん(33)は中学教諭の陽子さん(33)と約9年の交際を実らせ3年前に結婚。当初から、早く帰宅した方が夕食を作るのが暗黙のルールになっている。

 陽子さんは現在、育児休業中だが、学級担任と部活動顧問だった時は帰宅が深夜になることがたびたびあった。和明さんは「疲れているのはお互いさま。料理は好きなので苦にならない」。さほどの気負いもなく、気軽に台所に立つ。

実家の協力仰ぐ


 鮮やかな包丁さばきや味付けは、学生時代に飲食店のアルバイトで覚えた。「基本が分かれば、あとは工夫次第。アレンジするのが楽しい」。たまの外食で「おいしい」と思えば、味覚を頼りに自宅で再現することもある。苦手な後片付けも「自分が嫌なことは、妻も嫌だろうから」と口に出さず、実行する。

 陽子さんは4月から現場復帰する予定。1歳の長男を預ける保育園は、食育に熱心なことを理由に選んだ。両方の実家の協力も仰ぎながら、忙しい時間を2人でやりくりするつもりだ。

 家事分担で大事なのは、互いを思いやり、自ら楽しむこと。「どんなに忙しくても、家族で夕食をとることにこだわり続けたい」。和明さんは家族3人の温かな食卓を思い描いている。


【写真】慣れた手つきで夕食を作る大坪和明さん