体験を一つの「気づき」に
昨年11月6日朝、いつもより早く、園児たちが父母らと一緒に登園してきた。教室のテーブルには園が用意した焼き魚、みそ汁などの朝食が並ぶ。親子で手を合わせ、「いただきます」。子どもたちの笑顔が広がった。
親子一緒に朝食
佐賀市諸富町の諸富保育園は5年前から6月と11月の年2回、保育園で親子一緒に朝食をとる取り組みを続けている。朝食の大切さを伝えるとともに、家庭での食事の様子を見ることで食の指導につなげる狙いだ。午前7時45分までに登園してきた家族に朝食を出し、毎回、30家族ほどが参加する。
ばたばたと忙しい朝。子どもより早く出勤したり、子どもだけ食べさせたりと、家族そろっての朝食は少ない。県体育保健課の調査(2008年)では、朝食を「家族そろって食べる」は小学5年生で約24%、中学2年生で約15%にとどまる。
諸富保育園の親子朝食は少し早起きした分、各家庭に余裕がある。「いつも何時に起きますか」。父親同士の会話も広がる。澤野武英園長は「普段、朝ご飯を食べていない父親を連れてくる家庭も増えた。意識は変わってきた」と取り組みの効果を語る。
ただ、各家庭の環境、事情はそれぞれ違い、「食生活」は極めてプライベートな問題だ。保育、幼稚園関係者は「園で食の大切さを子どもたちに伝えても、家庭で生かさなければ意味がない」と話す一方、「どこまで踏み込めるかは難しい」と声をそろえる。朝食をどう位置づけるかも含め、食の問題は結局、保護者の意識にかかっている。
多様化する問題
鳥栖市の吉田光美(てるみ)さん(43)は3人の子どもと夫、両親の7人家族。朝食は毎日、ご飯とみそ汁、父がつけた漬物を出す。
吉田さんは8年前、地元の公民館で開かれた自然食の料理教室に参加した。そこで郷土食や野菜の良さをあらためて見直した。みその造り方も学び、以来、みそは手づくりだ。「それまではお店で買うのが常識だったが、今は造るのが当たり前。自分で造ったみそだから、子どもたちにも食べさせたい」という。
「家を出るのが少し遅れても、子どもたちには残さずに朝食を食べさせている」と吉田さん。「命をもらわないと命がつながらないし、小さいころから本当の味を覚えさせたい」と話す。
多様化する食の問題。長年の食習慣を見直すには何かきっかけが必要だ。吉田さんがそうだったように、ちょっとした体験、情報が「気づき」になる。吉田さんは「忙しい朝にみそ汁は面倒くさい」という声に対し、「花かつおを鍋でいため、ぱりぱりになったところを手でつぶして粉末にしておく。それを入れるだけで簡単にだしがとれる」。そんな工夫を提案した。
【写真】朝食にみそ汁を用意する(本文とは関係ありません)
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