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第1部 家庭はいま<5>固食、偏食 (10年2月4日)

1人の時に自立できず

 

 県中部のアパートで暮らす女子大生の神山美沙さん(22)=仮名=は一人暮らしを始めて4年。「食べ物にはあまり執着しないタイプ」だ。

 神山さんのある日の食生活。午前9時すぎに起床。普段より遅かったため、朝食は抜き。昼食は大学の食堂でカレーを注文した。授業を終えてアパートに戻ると、午後6時半に夕食。メニューはドラッグストアで買った冷凍食品のお好み焼き1品。寝る前に翌朝のごみ出しの準備をし、賞味期限が迫っていたヨーグルトを一つ食べた。

 

レトルトで夕食

 

写真
 神山さんは2年前まで自炊していたが、いまは仕送りが少なくなる月末にしか台所に立たない。「母は夜勤が多くて忙しく、自宅でもレトルト系が多かった」という。料理も「危なっかしい」と言われ、簡単なものしか作らなかった。本格的に料理を始めたのは大学入学後。みそ汁はだしをとることが必要と初めて知った。

 

 佐賀市の平沢克己さん(27)=仮名=は社会人になって3年。大学時代から一人暮らしを続けている。いま、家で食事を作る時は「鍋」と「カレー」の繰り返しだ。

 

 料理は好きだが、学業が忙しくなり、余裕がなくなった。いろいろ試す中、鍋とカレーの効率の良さに気づく。例えば、初日は寄せ鍋。次の日はうどんを入れ、3日目はキムチ鍋。飽きてきた4日目にカレーを作るといったパターンだ。

 

 「食べないより食べた方がいいし、コンビニ弁当よりは鍋がいい。野菜がいっぱいとれるし、安くつく。それに体調もいい」と平沢さん。ただ、一人の食事は味気なく、時間がない朝は台所のコンロの前にいすを置き、そこで食べる時もある。

 

 一人暮らしを始めた時、食は乱れがちだ。例えば2005年の国民健康・栄養調査を見ると、朝食欠食が始まった時期は「20~29歳」が24%、「高校卒業のころ」が約20%で、半数近くが30歳前に朝食をとらなくなる。

 

親の“監視”なく

 

 その原因には親の〝監視〟がなくなることや、「ゆとりのなさ」があるが、それだけでは済ませられない面もある。教育関係者の一人は「食に対する価値観は家庭に大きく左右される」と強調。幼少期からの食環境が自立した時の食生活に現れると指摘する。

 

 例えば日曜の昼、千円札を手にコンビニに向かう中学生。両親が用事で出かける際、いつも「これで何か食べて」と渡される。そんな時、買うのは決まって空揚げとおにぎりだ。

 

 一人で食べる「孤食」は好きなものばかり食べる「固食」となり、やがて「偏食」に行き着く恐れがある。解決には自律心や意識改革しかないが、長年の食習慣は簡単には変わらない。神山さんは「とにかく食べられればいい」と言った。

 

【写真】コンビニエンスストアで買った弁当を手に帰宅する一人暮らしの男性(本文とは関係ありません)