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わたしの視点<1>農民作家・山下惣一さん (10年1月1日)

命を人任せにするな


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やました・そういち 1936年生まれ。コメやミカンなどを作り、現場に根ざした文筆活動を続けている。81年には「減反神社」で直木賞候補に。「身土不二の探究」など著書多数。農や食など幅広い視点で講演もしている。唐津市。
 □食をめぐる問題で、いま最も気がかりなことは。


 ■料理を作らない人が増えたことかな。「便利だから」と、食材じゃなく、食べられるようになったものばかりを買い求めている。実際、コメは売れないけれど、おこわや握り飯は売れる。大根も漬け物や、すり下ろした冷凍物だと売れる。生産者と消費者の間に加工や調理をする人が大量にいないと、成り立たない社会になっている。

 安さで輸入加工食品も売れているが、生産地から口に入るまで距離があるし、いろんな人が介在するので、消費者はリスクを負う覚悟がないといかん。なのに、当然のように「安全なものを提供しろ」と声高に言う。とんでもない心得違いだ。命を人任せにしちゃいかん。調理を普段していれば「こんな値段で作れるはずがない」「おかしい」と気づくことだってできる。


「本物」見極めて


 □偽装表示が絶えない。消費者はどう対応すべきか。


 ■地べたで飼う地鶏ひとつとっても、血統が同じならケージで飼われたものと区別がつかない。抜け道はいくらでもあり、基準や取り締まりで安全を守ろうとしても限界がある。だから、一人一人が地産地消を基本に「本物」を目と鼻と口で味わい、見極められるようにならないと。人任せの食が続けば、本物さえ分からなくなり、生産者が丹精込める意味もなくなる。


 □2008年度の食料自給率(カロリー基準)は41%で、先進国では最低水準。国は20年度までに50%に引き上げる方針を掲げているが。


 ■コメの消費が増え、主食に戻らない限り難しい。食生活の変化が根底にあり、消費者のニーズだからと、イチゴやサクランボを作っていても自給率が高まるはずもない。

 この問題は、家庭の変化も影響しているんじゃないかな。ミカンの消費量はピーク時の4分の1に減っている。これは「食卓から一家だんらんが消えたから」というのがわたしの説だ。リンゴの消費量が落ちたのも、ナイフで果物をむけない人口が増えていることと無関係じゃない。危険予防や犯罪防止でナイフを取り上げてきた子どもたちが、いまや親になっている。


弁当の日は希望


 □教育現場の課題は。


 ■学校給食で食べ残したパンを全部捨てるケースがある。O157の発生などを警戒してのことらしいが、「もったいない」教育との兼ね合いをどうするのか。腐る過程まで教えて教育だろうに。

 給食に骨を抜いた魚を出すことは”常識”らしいね。講演先で管理栄養士から「いまどき骨のある魚を出したら、みんなのどにひっかけてパニックになる。そうなったら誰が責任を取るんですか」と言われたことがあったよ。

 こうしたことは、安全を名目にした責任回避にも映る。市販の弁当から機内食まで社会が一様にそうで、食べる力、生きる力を削いでいるような気がしてならない。日本人の体質は弱ってしまい、海外には携帯食を持たなければ行けなくなるんじゃないか。


 □食の在り方をどう変えるべきか。


 ■風土とつながらない食生活は農漁業をつぶし、人を不健康にすると思う。安く手軽な食から抜け出すことは簡単じゃないが、できる人から現状を変えていってほしい。

 児童や生徒が弁当を作り、学校に持参する「弁当の日」はひとつの希望だね。献立や食材購入、調理、弁当箱詰めのすべてを自分でする運動で、全国500校以上に広がっていると聞く。こうした原体験は将来に生きてくる。そこに賛同する親や先生もいるわけで、うれしいじゃない。