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平和憲法骨抜きに 県内の子育て世代ら憂う声

2014年07月02日 10時04分

反対を市民に訴え JR鳥栖駅前
反対を市民に訴え JR鳥栖駅前

 憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使容認に踏み出した日本。戦後堅持してきた専守防衛を転換し、海外での自衛隊の武力行使に道が開かれた。これまで築き上げた「平和国家」は「戦争のできる国」へと変質してしまうのか。1日の政府の閣議決定を受け、佐賀県内の子育て世代などから「この国の未来」を憂う声が上がった。(杉原孝幸、青木宏文、村上大祐、福本真理)

 鳥栖市のJR鳥栖駅前では、集団的自衛権の行使容認に反対する市民グループが安倍首相の辞任を求めて署名を呼び掛けた。メンバーの整体師大久保淳一さん(49)は「時の政権の都合で憲法解釈がころころ変わっていいのか」と疑問を投げ掛けた。

 中3と小5の子どもを持つ。彼らが将来、戦争に巻き込まれない保証はない。今回、与党間の文言調整だけで安保政策を転換させた政治の「まやかし」を見せつけられた。「子どもたちには、物事の本質を見極める目を育ててやらないと」

 元高校教師で、教え子を自衛隊に送り出してきた県西部の男性(75)は「米国の要請があれば遠い戦地にも赴くことになるだろう。そうなれば、自信を持ってこの仕事を推薦できるだろうか」と教育現場の苦悩を代弁した。

 さまざまな資格や技能を身に付けることができ、国を守り、人を助ける誇り高い仕事-。ただそれも、日本が専守防衛の国であることが前提だった。「若者に覚悟を強いる時代になったのか」と嘆息した。

 「いろんな疑問が解消できないまま決められてしまった」。9歳と6歳の男児を持つ唐津市の女性(45)は「国民不在」の論議にいらだちを隠さない。参戦の危険がつきまとう自衛隊の入隊希望者が減れば、徴兵制の論議も浮上しかねない。「子どもたちが軍隊に入るようなことになったら…」と表情を曇らせた。

 3人の子どもを育てる佐賀市の主婦(39)は「安倍さんは『平和を守るため』と言っているけど、外交姿勢を見ていると本当かな、と思う」と手厳しい。

 佐賀市のハローワークで職探しをしていた男性(24)は「ブラック企業」に象徴される、若者を使い捨てにする風潮に重ね合わせながら、「戦場に行くのは政治家じゃなく若者でしょ。犠牲になるのはいつも若者ばかり」と憤った。

■「拙速」「理解まだ」自民内に疑問の声 「暴挙」「憲法破壊」

 戦後日本の安保政策を大転換する集団的自衛権の行使容認に踏み込んだ安倍内閣の閣議決定に対し、佐賀県内の野党は「憲法破壊につながる暴挙」と一斉に批判した。自民党関係者も一定の理解を示しつつ、「議論が詰まっていない」と決定を急いだ政権の対応に疑問を投げ掛け、国民への丁寧な説明を求めた。

 県内で唯一、解釈改憲に反対する意見書を可決した杵島郡大町町議会。自民党員で無所属の三谷英史議員は「本来は憲法を改正するのが筋だが、国際情勢などから解釈変更も反対ではない」としながらも、「国民の理解が得られているとは思えない。なぜそんなに急ぐのか」といぶかった。

 県議会最大会派・自民党の指山清範政調会長は「今回はもう少し時間をかけて国民の声を聞いてもよかった。今後の関連法改正の国会論議などを通して政府の考え方をしっかり説明すべき」と注文した。連立を組む公明党県本部代表の伊藤豊県議は「国民を守るという専守防衛の考え方の中で何ができるかを検討し、歯止めをかけた上での決定」と「限定容認」という立場を強調した。ただ、「国民理解はまだ。難しい問題だが、しっかり説明していく必要がある」と指摘した。

 野党は強く反発した。首相会見をテレビで見た民主党県連の原康彦幹事長は「戦争には向かわないと強調していたが、自衛隊員が戦争で犠牲になるかもしれないという記者の質問、国民の不安に答えていない」と批判した。

 共産党県委員会の今田真人委員長は「立憲主義を自ら否定する安倍政権は、許されない。行使容認の是非以前の問題だ」と断じた。社民党県連幹事長の徳光清孝県議は「国会や国民の議論も不十分なまま、憲法上の重大な問題が解釈によって乗り越えられるという前例になってしまう」と危機感を募らせ、「閣議決定を無効にするため、政権交代につなげる運動の機運を高めなければならない」。

 一方、古川康知事は閣議決定について「国防は政府が責任を持って判断し、決めていくこと。(与党協議で)公明党が指摘してきた問題について心配がないような運用をしてほしい」とくぎを刺した。陸上自衛隊の目達原駐屯地がある神埼郡吉野ケ里町の多良正裕町長は「町内には(隊員の)家族もいる。いろいろな意見があると思うが、部隊が安全に活動できる環境を整えてほしい」と求めた。

■佐賀市内街頭で2団体抗議行動

 集団的自衛権行使容認に反対する団体、政党、市民でつくる2団体は1日、佐賀市内の街頭で閣議決定への抗議行動を行った。

 佐賀駅前では県労連、共産県委員会、高教組、市民らでつくる実行委約20人が「集団的自衛権行使容認の閣議決定は許さない」と書いた横断幕を広げて反対をアピール。「憲法を勝手に変えるな」「若者を戦場に送るな」などとシュプレヒコールを繰り返した。県平和運動センターなどでつくる別の実行委も佐賀玉屋前で閣議決定に抗議するチラシを通行人に配り、行使容認反対を訴えた。

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