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諫早開門差し止め命令 司法判断「ねじれ」継続

長崎地裁判決「営農者に重大な被害」

2017年04月18日 13時15分

開門差し止めを命じる判決後、報道陣の取材に応じる漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長(左)とタイラギ漁業者平方宣清さん=17日午後、長崎市の長崎地裁前
開門差し止めを命じる判決後、報道陣の取材に応じる漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長(左)とタイラギ漁業者平方宣清さん=17日午後、長崎市の長崎地裁前
諫早開門差し止め命令 司法判断「ねじれ」継続

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門調査を巡り、開門に反対する干拓地の営農者らが国に差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁は17日、開門差し止めを命じる判決を言い渡した。合わせて申し立てていた仮処分では2013年11月に開門差し止めを決定しており、国が開門と開門禁止の義務を負う司法判断のねじれは続くことになる。

 判決理由で松葉佐隆之裁判長(武田瑞佳裁判長代読)は、国が既に対策工事の予算措置を取っている限定開門について「塩害、潮風害、農業用水の一部喪失が発生する可能性があり、被害は農業者の生活基盤に直接関わるもので重大」と認定した。それに比べ、漁場環境が改善する可能性や効果は高くないと判断した。地裁は、15年11月に仮処分決定に対して国の異議申し立てを却下しており、その理由を踏襲した。

 判決を受け、訴訟に補助参加する漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は「認定された農業被害は一部にとどまり、補償の問題と判断するのが妥当」と主張、「確定判決を止めていいという判断がどこから出てくるのか。極めておかしな、偏った判決だ」と強く批判し、控訴する意向を示した。

 被告の国側は、山本有二農相が「今後、判決内容を詳細に分析し、関係省庁と連携しつつ、適切に対応していく」とコメントを出し、控訴期限の5月1日までに判断する考え。

 営農者側の山下俊夫弁護団長は仮処分決定に続き、本訴訟の判決で主張が認められ「一歩前進」と評価した。

 有明海沿岸の漁業者らの訴えを認めて国に開門を命じた福岡高裁判決が10年12月に確定したのを受け、営農者らは11年4月、開門すれば農業などに悪影響を及ぼし、水害の危険性も高まると長崎地裁に提訴した。地裁は13年11月、開門差し止めの仮処分を決定した。

 16年1月には、開門しない前提での和解を勧告した。国と漁業者側、営農者側の三者による和解協議では、国が漁業環境改善に充てる100億円の基金案を提示したが、漁業者側が拒否。開門を含めた議論は営農者側が拒み、協議は今年3月27日に打ち切られた。

 開門義務に従わない国には制裁金が科され、今月10日現在で7億9290万円を漁業者側に支払っている。

■和解の道、諦めるな

 漁業者側に開門を認めた2010年12月の福岡高裁確定判決に対抗し、6年前に営農者側が開門禁止を求めて提訴し争った今回の訴訟。長崎地裁は13年11月に開門を差し止める仮処分を決定し、国の異議申し立ても却下しており、17日の判決は既定路線と言える。

 今回出た判決でも、高裁の確定判決の効力が消えるわけではなく、国が「開門命令」と「開門禁止」の相反する義務を負っている状況は、何ら変わらない。

 開門問題に関する係争中の裁判は地裁、高裁、最高裁まで計7件が乱立する。特に重要な意味を持つのが、国が漁業者側に支払い続けている制裁金などの強制執行をしないよう求めている福岡高裁の案件だ。

 漁業権の消滅を巡る法的な解釈が主要な争点で、国の主張通り「消滅」となれば、開門を求める権利がなくなり、漁業者側の確定判決は事実上無効になる。これには国も「漁業者側は納得しないだろう」とみる。

 法的な三者の義務や権利を整理するには、司法の場での和解が不可欠だ。閉め切りから20年。混迷する法廷闘争に終止符を打つためにも、諦めることなく、福岡高裁で和解協議の場を設ける努力を求めたい。

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