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山口知事 新春インタビュー

目前の課題、愚直に

2016年01月01日 13時04分

県政の課題についての取り組みを述べる山口祥義知事=佐賀県庁
県政の課題についての取り組みを述べる山口祥義知事=佐賀県庁
就任から1年。澤野善文佐賀新聞編集局長のインタビューに応じる山口祥義知事(左)=佐賀県庁
就任から1年。澤野善文佐賀新聞編集局長のインタビューに応じる山口祥義知事(左)=佐賀県庁

■有田焼400年・世界へPRする

■佐賀空港・滑走路延長、早期に判断

 年またぎ選挙で山口県政が誕生して1年を迎える。2016年はオスプレイ配備、原発再稼働、整備新幹線、諫早湾干拓の開門など国策絡みの課題で判断を迫られ、真価を問われる年になりそうだ。山口祥義知事に展望を聞いた。(聞き手・澤野善文編集局長)

動画(約20分)はこちら

 -就任から1年。さまざまな現場に足を運ぶ姿が印象的だった。総括と今後の抱負を。

  知事  県民と語り合うことで状況をつかもうと、一生懸命にやってきた。就任4日目に発生した県内初の鳥インフルエンザでいきなり危機管理対応を迫られ、私自身、7月には早期の胃がんも見つかった。全国ワーストの肝がん死亡率、交通人身事故率に加え、オスプレイの佐賀空港配備計画や玄海原発再稼働でも県民の命、安全安心を第一に臨み、緊張感のある1年だった。今年のテーマには「生きる」を掲げたい。

 -16年は何と言っても有田焼が創業400年の節目を迎える。

  知事  伝統を守ることと共に、時代に合ったチャレンジが必要だ。陶芸家が作りたい物を作ることも大切だが、(顧客の視点を重視する)マーケットインの発想で「使ってなんぼ」の商品開発が求められている。有田に実際に来て何ができるのかも鍵になる。有田ほどの焼き物の産地はないことをしっかり証明する。

 -県政運営の指針に掲げた「世界に誇れる佐賀づくり」をどう具体化するのか。

  知事  有田焼がまさにそうだが、バルーンや唐津くんち、ノリや佐賀牛など佐賀にはすごい潜在能力があるのに、県民がそれに気付いていない。かたや外国人は放っておいても佐賀を高く評価してくれる。世界にアピールする方が近道かなと思っている。一つ一つの素材を磨き上げ、唐津や呼子、鳥栖といった地域単位ではない、佐賀県全体のイメージを打ち出していきたい。有田焼400周年はそのチャンスだ。

 「地方創生」では福岡県をターゲットにした施策に力を入れる。「何をしても福岡に吸い取られる」という感覚からか、ほとんど何もしてこなかった。佐賀の持つ本質的な魅力は移住促進の面でも可能性がある。今、糸島市がブームだが、一つ先にはもっと素晴らしい唐津や三瀬がある。福岡の小川知事もよく古湯に遊びに来るらしいが、奥座敷感覚でもいい。福岡との距離なら十分勝算がある。ディープなスポットとか、ポイントを絞って打ち出していきたい。都会的なものを持ち込むのではなく、佐賀らしさでやったろうかな、と思っている。

 -佐賀空港を県政発展に欠かせない交通インフラと捉え、滑走路延長も検討している。

  知事  1月中に空港のリニューアルプランを発表する予定だ。愛称を「九州佐賀国際空港」とし、旅客ビルや駐機場の機能強化を示せればと考えている。具体的には新年度当初予算に盛り込む形になる。滑走路延長は私としてはやりたい思いがあるが、費用対効果などを検証してなるべく早い時期に判断したい。

 経済は生き物で、中国は減速しつつあるが、それでも東、東南アジアの伸びしろは魅力だ。今の滑走路ではこうしたターゲットエリアに飛行機を飛ばせない。国際戦略上、柔軟な対応ができるように備える必要がある。福岡空港の混雑空港指定や滑走路増設は佐賀空港にも影響が及ぶ。九州の空港のネットワーク化が進むはずなので、対応可能な態勢をつくりたい。

 -佐賀空港へのオスプレイ配備計画は、防衛省が米軍利用を取り下げたことで議論が動き出した。

  知事  本当によこしまな気持ちはなく、県民の安全を第一に真摯(しんし)に時間を掛けて向き合っている。防衛省が要請項目から米軍利用を取り下げたのは大きな意味があったと思う。将来的な米軍利用に関する「全国横並び」という意味や現在30ヘクタールとしている施設の規模拡大の可能性について、事務的に要請内容の精査を進めている。これからも国には誠実に対応していただけると思っている。

 国が地元と話すことは止めていない。地元の信頼を裏切らないようにやってほしいと常々言っている。先を急ぐ気持ちはない。県議会にも特別委員会ができ、議論を注目している。執行部とは車の両輪だが、一つになってはいけない。互いを押さえつけることなく、それぞれの判断があっていい。原発も諫干も新幹線もそうだが、目の前の課題に愚直に対応することで出てくるものには価値があると思う。

 -原発問題では、九電に「三つの約束」として「うそはつかず、風通しの良い関係で、あらゆる事象に対応できる体制」を求めた。

  知事  使用済み核燃料の「乾式貯蔵施設」建設について県に詳しい説明がないまま公表した点など、正直言ってまだ九電とは100%の信頼関係を築くまでに至っていない。原発を再稼働しない今でも放射性物質はあるわけで、適正管理は欠かせない。私は原発依存度を下げるべきというメッセージを発しているが、1号機の廃炉決定や、それを安全協定の事前了解事項に含めたことは評価できる。規制委員会の適合性審査が終われば、地元の実情に応じて国の方から相談があるはずなので、県としてはそうした機会に地元の声を伝えていきたい。

 -諫早湾干拓事業の開門関連訴訟で、開門に反対する長崎県の干拓営農者らが和解協議に応じる姿勢を見せている。

  知事  協議の場につくのはいいことだが、(開門する、しないなどの)前提を決めてしまうのはどうかと思う。幅広く議論することが大事だ。長崎県の中村法道知事ともテーマを決めずにさまざまな機会を通じて会いたいと思う。長崎県庁で一緒に仕事をしていたので一定の信頼関係はある。自由な議論から解決のヒントが見つかることもあるかもしれない。佐賀県は深刻な漁業被害の原因を探るために開門調査が必要という立場だ。何も決めつけているわけではなく、長崎側にも柔軟な対応を期待したい。

 -九州新幹線長崎ルートに導入するフリーゲージトレイン(FGT)の開発が難航し、佐賀、長崎両県の考えに相違も出ている。

  知事  この問題ではぐっと我慢している。225億円に及ぶ佐賀県の負担は苦渋の決断だったと思うし、(在来線沿線の)鹿島市や江北町などいろんな思いや経緯があって今のパッケージがある。それを尊重する以外の選択肢はない。FGTの開発断念はあってはならないことだし、費用対効果などを一から見直すことになれば、長崎県にとっても残念な結果が生じる。フル規格で県負担が800億円になれば県は当分何もできない。われわれの責任ではないところで、両県の一体感が損なわれることは残念だ。

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