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=エール ひと交差点= 光野裕也さん(高志館高1年)

2015年05月17日 10時11分

強豪・高志館高アーチェリー部で力を磨く光野裕也さん=佐賀市大和町の同校
強豪・高志館高アーチェリー部で力を磨く光野裕也さん=佐賀市大和町の同校

■アーチェリー強豪校で奮闘 障害と向き合い夢に照準

 脳性まひで足が不自由な少年が、アーチェリーに出会い、人生の新たな一歩を踏み出した。佐賀市大和町の光野裕也さん(15)は今春、金立特別支援学校から一般入試でアーチェリーの強豪・高志館高に合格。これまでと環境が大きく違う学校生活に戸惑いながらも、部活で腕を磨く。車いすの上から放つ矢は、まだ飛距離30メートル。もっと、もっと遠くへ-。自身の歩みと重ねるように、弓を引く手に力をこめる。

 【つえ頼りに】

 光野さんは乳児期から立つことも歩くこともできず、訓練や手術を繰り返して、つえや装具を頼りに生活できるようになった。

 アーチェリーとの出会いは2007年。「青春・佐賀総体」で高志館高が女子団体で日本一に輝いた瞬間を観客席で見守った。その感動が忘れられず、2年後に市の広報紙で見掛けたアーチェリー教室へ通い始めた。

 以来ほぼ毎週、教室の指導者の元まで通い、練習に打ち込んできた。昨秋、長崎県で開かれた全国障害者スポーツ大会のアーチェリー(脳原性まひ1部)に出場。初めての大舞台で部門1位を射止めた。「あれほど大きな会場で、大観衆の注目を浴びながらプレーできるなんて」。身震いするような感激を味わった。

 貴重な経験はそれだけではなかった。大会前の結団式では国体出場選手とともに、誓いの言葉を述べる大役も果たした。母のかおりさん(49)は「大会の経験がよほど充実していたのか、何だか頼もしくなった気がする」と目を細める。

 【苦労の連続】

 競技を続けるため、進路は同高食品流通科を選んだ。特別支援学校から一般の高校への進学は珍しい。学校は自宅から近いとはいえ、新生活は慣れないことばかりだ。

 通学は最高時速6キロの「シニアカー」。暗い夜道を帰るときは怖さを感じることもある。教室ではつえを使って移動。部活では車いすが欠かせない。生活のさまざまな局面で動く手段を変えなければならない光野さんには苦労の連続だ。

 それでも、かおりさんは「時間内行動、部活での遠征…。そうした環境で過ごすことで、きっと精神的に強くなれる」とエールを送る。光野さん自身も「厳しいのは覚悟の上。社会に出て行くための“荒波”にもまれているときだと思っている」。

 将来は事務系の仕事に就こうと、簿記などの資格取得にも意欲を見せるが、何より、日ごろ細やかにサポートしてくれる級友や部活の仲間たちと高校生活を楽しみたい。

 今、光野さんが矢を打てる距離は30メートル。これから50メートル、70メートル先の的を射るのが目標という。「まずはフォームを固めて、一歩一歩、地道に距離を伸ばしたい」。そしていつか、インターハイや国際大会で勝負できる選手になりたい。勉強で、スポーツで広がっていく夢。それを射抜くために挑戦する日々は、始まったばかりだ。

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