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イラク駐留米軍の最後の戦闘部隊が撤退を完了した。最大時17万人だった駐留部隊は今月末でイラク治安部隊訓練などの任務を負う5万人に減り、2011年末には完全撤退する。撤退が完了したことをまずは評価したい。
オバマ大統領は「われわれの戦闘任務は今月で終わり、多数の部隊が撤退を完了する」との国民向けメッセージを発表、オバマ政権は対テロ戦の主戦場であるアフガニスタンに戦力の軸足を移す。03年3月の開戦から7年5カ月。イラクは治安回復を駐留米軍に頼らずに独力で達成しなければならない大きな節目を迎えたといえよう。
だが、憂慮すべきことに、イラクの内政が混乱している。3月の連邦議会選後、宗派対立などで連立協議が進まず、新政権発足のめどが立っていない。政治の空白が武装勢力にすきを与えている面もあり、米軍の戦闘部隊撤退で混乱に拍車がかかる懸念もある。7月にはバイデン米副大統領がイラクを訪れ、マリキ首相らに早期の政権樹立を促したが、空振りに終わった。イラクは国民融和へと踏み出し、新政権の発足を急がなければならない。
米軍戦闘部隊の撤退後に治安を担うのは66万人規模のイラク治安部隊だ。昨年6月、都市部から米軍戦闘部隊が撤退して以降、都市部では治安部隊が武装勢力との戦闘の前面に立ってきた。米側は「治安部隊の能力は格段に向上した」と評価する。
3年前と比べると治安は改善されたが、米軍戦闘部隊の撤退に照準を合わせて、7月以降、バグダッドはじめ各地で国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力による自爆テロなどの攻撃が多発した。
今月17日にはバグダッドでイラク軍施設を狙った自爆テロがあり、1件のテロとしては今年最悪の61人が死亡。アルカイダ系勢力はテロでイラクの治安維持の能力不足を示し、社会不安を拡大させようとしているとみられる。このためイラクの治安部隊だけでは不安だと、米軍撤退の延期を求める声も出ていた。
だが、オバマ大統領は計画通りの撤退に踏み切った。イラク戦争は、開戦の理由とされた大量破壊兵器が見つからず、今では「大義なき戦争」だったことが明らかになった。戦後の占領の長期化がイラクの反米意識を刺激して、武装勢力によるテロや攻撃が激化し米軍の死者は4400人を超えた。
戦闘部隊のイラク撤退は、11月の米中間選挙を前に、オバマ大統領が就任後に9万人以上の米兵の帰還とイラクの治安改善の実績を、数少ない外交成果として宣伝する狙いもある。
だが、連邦議会では選挙で第1勢力になったアラウィ元首相率いる政党連合「イラキーヤ」と、第2勢力のマリキ首相率いる「法治国家連合」が主導権を争っている。それぞれイスラム教スンニ派とシーア派の利益を代弁したような形になっており、少数民族問題も絡んでいる。今、イラクは宗派対立が再燃しかねない危うい状況にある。
アフガンでの対テロ作戦遂行には、イラクの安定が不可欠でもある。米政府は民生の安定に最大限の力を注ぐべきだ。戦争を支持した日本をはじめ国際社会も、その責務を負っている。(横尾 章)
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