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佐賀北 栄光の軌跡
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準決勝 佐賀北3-0長崎日大(07年8月21日)

必勝完封リレーで初の決勝進出

【写真=佐賀北―長崎日大】2回裏佐賀北1死一、三塁、馬場の捕前スクイズで三走田中が先制の生還。捕手上戸=甲子園
 第89回全国高校野球選手権大会第14日は21日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で準決勝を行い、県代表の佐賀北が、長崎日大(長崎)を3―0で退け、初の決勝進出を果たした。

 県勢の決勝進出は1994年の佐賀商以来、13年ぶり2度目となる。

 佐賀北は2回一死から6番田中が敵失で出塁。江頭が右前打で続き一、三塁とした。次打者の馬場は初球を捕手前に絶妙のスクイズを決め、三走田中が生還し先制した。

 4回には先頭の5番大串が左中間を破る二塁打で出塁し、田中が送り1死三塁。江頭への2球目が暴投となり貴重な追加点を挙げた。7回にも辻の左犠飛で1点を加えダメを押した。

 馬場は緩急を付けた投球がさえ、7回までを被安打3の無失点に抑えた。救援した久保も得意のスライダーと直球をコーナーに集め、長崎日大打線を寄せ付けなかった。

 決勝は22日午後1時から広陵(広島)と対戦する。

【写真上=佐賀北―長崎日大】2回裏佐賀北1死一、三塁、馬場の捕前スクイズで三走田中が先制の生還。捕手上戸=甲子園

 佐賀北・百崎敏克監督の話 9回二死になって、これで決勝までいけるのかな、と思った。きょう馬場はよかったし、1点は与えてもいいと思って7回まで投げさせた。攻撃も伸び伸び普段の力以上のものを発揮している。ただただ驚いている。



 ▽準決勝
 佐賀北-長崎日大(13時49分、23000人)

 

長崎日大

佐賀北

×

    

【長崎日大】
浦口、小山-上戸

【佐賀北】
馬場、久保-市丸

▽二塁打 大串(佐)
▽犠打 瀬戸口、柴田(長)辻2、井手、田中、馬場、馬場崎(佐)
▽盗塁 内川(佐)
▽失策 永田
▽暴投 浦口
▽試合時間 1時間45分


【戦評】
 ヒットが続くわけではない。エラーでも四球でも出塁したら執拗(しつよう)にバントを決め、走ってもくる。佐賀北がボディーブローのような攻撃で、長崎日大を沈めた。

 2回裏1死。6番田中の遊撃への深い当たりが、悪送球を誘う。絶不調にあえぐ江頭が甲子園3本目の右前打で続く。一、三塁。次打者は先発の馬場。初球の変化球をバントで転がす。三走田中が頭から飛び込んで長崎日大・上戸のタッチをかわした。両校監督が「どうしても欲しい」と口をそろえた先取点は佐賀北が奪った。

 4回の主役は大串だ。無死から初球をたたいた。打球は左中間をライナーで破り二塁打。田中のバントで三進。7番江頭への2球目が暴投となり、大串は2点目のホームを踏んだ。

 7回は得意の「無安打得点」だ。四球出塁の代走内川が二盗。馬場崎がやはり送り1死三塁。1番辻の打球は左翼への浅い飛球。内川は果敢に本塁を突いた。「足」で勝利を引き寄せる3点目を奪った。この試合、上位の1―4番はノーヒットと振るわなかったが、小技と機動力がそれを補った。

 先発馬場は、甲子園での快投を支える低めの制球がこの日もさえわたった。外角中心の配球で時折、インコースを巧みに突き、相手打線に的を絞らせない、佐賀大会を含め、この夏「最長」の7回を散発3安打。残り2イニングは久保が、またも無失点救援。万全の継投で、決勝の切符を手に入れた。

 



進化止まらぬ左腕馬場 自身最長7回零封

【写真=佐賀北-長崎日大】7回を投げ終え、胸を張ってベンチへ帰る先発馬場=甲子園
 「小さな左腕」は一体どこまで進化を続けるのだろうか。佐賀北の先発馬場将史がまた、甲子園のマウンドを楽しんだ。県大会を通しても最長となる7イニングを被安打3。こん身の86球で、チームを夢のファイナルに導いた。

 大振りせず、コンパクトに振り抜く長崎日大打線。前日の準々決勝は、楊志館投手陣に11安打で襲いかかった。この強力打線にどう向かうか。捕手の市丸大介と立てた配球は、いつも通り「外の変化球主体」だった。立ち上がり、市丸が異変に気付く。「見てくる」と思っていた変化球を積極的に打ちにくる。

 急きょ組み立てを変えた。「手元で伸びていた」という直球を多投。しかも見せ球として内角を攻めた。伸びがあるとはいえ、130キロに届かない。甘く入れば長打につながる。

 この勇気がいる内角攻めを可能にしたのは、どんなマウンドでも緊張しないという強心臓と「抜群だった」と市丸が振り返る制球だった。

 1点先制した直後の3回表、2死三塁のピンチを背負った。つかみかけた流れを相手に渡したくない場面。迎えた右打者の永田にも「攻め抜いた」(馬場)。初球、2球目と続けて内角直球を投げ込んだ。ボールになったものの、内角を意識させることで外を広く使える。最後はボールからストライクになる伝家の宝刀スライダーで中飛に切って取った。

 帝京戦でも内角を突いたが、カウントを整える球が甘く入り、5回で3点を失った。しかし、この日は同じ内角でも球が生きていた。ホームベースの横いっぱいを使った。

 試合後、馬場は「ベストピッチじゃないけど、甘い球が少なかったのは自分でも成長できたと思う」。いつものように遠慮がちに答えた。宇治山田商との再試合ではフォームの乱れをきっちり修正、この日も前の試合の課題をクリアした。一戦ごとに強くなるチームと同じように、たくましさを増していく背番号「10」が、大旗をかけて22日も先発のマウンドに立つ。

【写真=佐賀北-長崎日大】7回を投げ終え、胸を張ってベンチへ帰る先発馬場=甲子園

代走内川、自信と勇気の生還 生きた二盗、光る観察眼 

写真=佐賀北-長崎日大】7回裏1死三塁、1番辻のレフトへの犠牲フライで、三走内川が相手捕手のタッチをかわし生還、3-0と突き放す=甲子園  
 どこにでもいる「俊足」ではない。チーム一の韋駄天(いだてん)には、本塁を陥れるだけの自信と勇気があった。7回裏一死三塁。代走として登場、3塁まで進んだ佐賀北・内川聖弥は、1番辻尭人の左翼への浅い飛球を見ながら思った。「見せ場だ」。グラブに白球が収まると同時に、27・43メートル先の「標的」めがけて突っ走った。

 返球はわずかに一塁側にそれた。捕球した長崎日大の捕手・上戸のタッチをかいくぐって、左手の指先でベースタッチした。一瞬の間。主審の両手が、水平に広がった。地鳴りのような大歓声が起きた。

 タッチアップをかけるには、あまりにもリスクが高い浅いフライ。だが、50メートル走5秒9のスピードに加え、「アウトのタイミングでも体を反らすとか、のけぞって何とかセーフにするという走塁練習をしていますから」。百崎敏克監督も「あの場面で突っ込まなかったら、使った意味がない」。絶大の信頼を置くスピードと判断力を発揮した背番号14を、そんな表現でたたえた。

 7月初旬の県大会直前。原因不明の40度近い高熱が続き、1週間の入院生活を余儀なくされた。中堅のポジションを争う馬場崎俊也も故障気味でレギュラーの座を奪う「チャンス」だっただけに落ち込んだ。

 だが、甲子園に入ってからも、その「足」を生かせる日が来ることを信じて、一塁コーチャーボックスから相手投手のけん制や投球モーションなどを観察し続けた。犠飛でのタッチアップにつながった無死一塁からの単独スチールも「相手投手の投球練習を見て、モーションが大きかったからいけると思った」。

 出場機会が限られる控え選手。だからこそ「ワンチャンスにかける思いは、本当に強いんです。決勝も足で見せることができたらいいですね」と内川。聖地での快進撃が止まらないチームには、レギュラーに負けない輝きを放つベンチメンバーがいる。


【写真=佐賀北-長崎日大】7回裏1死三塁、1番辻のレフトへの犠牲フライで、三走内川が相手捕手のタッチをかわし生還、3-0と突き放す=甲子園

不調江頭、痛烈右前打で先制アシスト

【写真=佐賀北-長崎日大】佐賀北2回裏、1死一塁。江頭が先制点の足がかりとなる右前打を放ちチャンスを広げる=甲子園
 湿っぽさがとれなかった打棒から、チームが渇望する先取点を引き寄せる一打が生まれた。2回裏1死一塁。佐賀北の7番江頭英治は「とにかく後につなぐ」とカウント1―3からの内角直球を強振。痛烈な打球が右前へと抜けていった。

 一走・田中亮は一気に三塁を陥れた。続く馬場将史のスクイズをおぜん立てする貴重な「アシスト打」。準々決勝の帝京戦まで5試合で17打数2安打。打率は1割2分にも満たない極度のスランプに陥っていた。

 16日の宇治山田商との引き分け再試合で2安打3打点の活躍を見せ、復調傾向と思われたが「どうしても積極的にいけなくて…」。ヒットを量産する同級生の5番大串亮平らとは対照的に、思うような打撃ができず苦しんでいた。

 勢いをつけるためにも、どうしても欲しい序盤の先制点。当たりの止まっている打者だけに「犠打で2死二塁」の手堅い策も選択肢としてあったはずだ。だが、この打席で百崎敏克監督のサインはあくまで「強攻」だった。試合の流れを左右する重要な局面で、指揮官は不調にあえぐ2年生の打力を信じた。江頭もそれに応えた。

 「こんなところまで来るなんて、本当に夢みたい。つなぐ意識を忘れず、次もやります」と江頭。総決算の大一番でも「貢献」の一打を狙っている。

【写真=佐賀北-長崎日大】佐賀北2回裏、1死一塁。江頭が先制点の足がかりとなる右前打を放ちチャンスを広げる=甲子園

大串、左中間2塁打で追加点口火

【写真=佐賀北|長崎日大】佐賀北4回裏無死、5番大串が左中間を破る二塁打を放つ=甲子園
 帝京との準々決勝では2度の好機で凡退するなど快音が聞かれなかった佐賀北5番・大串亮平が、貴重な追加点の口火となる左中間二塁打を放つなど2安打の活躍で、復調の兆しを見せた。

 帝京戦では左腕垣ケ原に全くタイミングが合わなかった。どうしても外角の変化球についていけない。悪いところは自分でも分かっていた。「右肩の開きを我慢して、踏み込めばいい」。前日の練習では、その一点に集中した。

 準決勝の相手先発も同じ左腕。1打席目は2球外角を攻められた後、内角で一塁ゴロに倒れた。迎えた2打席目。「初球は外」。肩の開きを抑え、思い切り踏み込んだ。外角低めの球をとらえた打球は、鋭いライナーで左中間を真っ二つに割っていった。

 長崎日大の同じく5番の曲渕は唐津一中出身で、佐賀北サッカー部の同級生を通じて、甲子園に入ってからメール交換をしていた。「互いに頑張ろう」。この日の朝、もらったメールだ。

 「今日はちょっと返しづらいけど、『お前たちの分まで頑張って勝つ』って送ります」。甲子園で出会い、戦った友との約束を胸に決戦に挑む。

【写真=佐賀北―長崎日大】佐賀北4回裏無死、5番大串が左中間を破る二塁打を放つ=甲子園

絶妙サインプレー ピンチの芽摘む

【写真=佐賀北|長崎日大】長崎日大5回表、無死で出た曲渕を佐賀北・市丸捕手からの好送球でタッチアウトにする田中二塁手=甲子園
 佐賀大会決勝のリプレーを見ているようだった。佐賀北内野陣が、5回表無死一塁からピックオフプレーで一走を刺殺。ピンチの芽を摘んだその鮮やかなプレーに、スタンドを埋めた大観衆からは「ウオー」というどよめきが起こった。

 バントに備え、一、三塁手がダッシュ。その間、二塁手が一塁カバーに入る。投球を外し、捕手がけん制で刺す。単純に見えるサインプレーだが佐賀大会決勝では初回に、この甲子園では準決勝という緊張の場面でやってのけた。矢のようなけん制を見せた捕手の市丸大介は「1球目に様子を見て、いけると思いました」と平然と振り返った。

 この試合も守備陣は2つの併殺を完成させるなど安定していた。無失策はこの日を含め3試合目。「うちは守りでリズムをつくるチームですから」と市丸。大舞台でも動じない、地に足のついた守りが躍進の原動力になっている。

【写真=佐賀北―長崎日大】長崎日大5回表、無死で出た曲渕を佐賀北・市丸捕手からの好送球でタッチアウトにする田中二塁手=甲子園

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