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佐賀北 栄光の軌跡
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3回戦 佐賀北5-2前橋商(07年8月17日)

逆転勝ちで初のベスト8進出

  第89回全国高校野球選手権大会第10日は17日、甲子園球場で3回戦を行い、春夏連覇を狙う常葉学園菊川(静岡)が日南学園(宮崎)に4-3でサヨナラ勝ちし、佐賀北(佐賀)楊志館(大分)長崎日大(長崎)とともに準々決勝へ進んだ。九州勢3校のベスト8は2000年以来。

 今春の選抜大会優勝の常葉学園菊川は8回に代打伊藤の3点本塁打で追いついた。延長10回にも伊藤が適時打を放って粘る日南学園を振り切り、初の8強入り。

 佐賀北は2回に馬場のランニング本塁打で同点とし、その後は小刻みに加点して前橋商(群馬)を5-2で退け、初めて準々決勝へ進んだ。

 春夏通じて初出場の楊志館は6回に打者一巡の猛攻で6点を奪い、開星(島根)を6-3で下した。

 長崎日大は、京都外大西(京都)に5-4で競り勝って7年ぶりのベスト8。

 

 ▽3回戦
 佐賀北-前橋商(16時59分、11000人)

 

前橋商

佐賀北

×

    

【前橋商】
佐々木、樺沢-森沢

【佐賀北】
馬場、久保-市丸


▽本塁打 佐々木1号(2)(馬場)馬場1号(2)(佐々木)

▽三塁打 森沢(前)大串(佐)
▽二塁打 樺沢、亀井(前)
▽犠打 佐々木(前)辻、井手、副島、田中、馬場(佐)
▽盗塁 大串、江頭(佐)
▽試合時間 1時間52分

戦評】ただ波に乗っているのではない。大舞台でも普段通りの野球ができる。それが佐賀北の強さだ。

 佐賀北は2回表1死一塁から前橋商・佐々木にスライダーを左翼ポール際まで運ばれ、2点を失った。

 直後の2回裏、先頭の大串が四球で出塁。田中はきっちり送った。2死後、馬場は0―1からの外角高めの直球を中前にはじき返した。相手中堅手は頭から飛び込んだが届かず、打球がバックスクリーン下のフェンスまで転がる間に、馬場は長駆ホームイン。試合を振りだしに戻した。

 続く3回。またも無死から井手が左前打。打撃好調の副島も定石通り送った後、市丸が前橋商・佐々木の変化球をとらえ、右前に勝ち越し打を放った。4回は、さらに「技」がさえる。先頭の江頭が四球。馬場が送った後、馬場崎が三塁線に絶妙のバントヒットを決め、1死一、三塁。続く辻がスクイズを決め貴重な追加点を挙げた。

 華々しく打ち崩したわけではない。走者を先に先に進める。相手バッテリーにしたら、いつの間にか点を取られているそんな感じだろう。

 馬場、久保の投手陣も同じだ。力でねじ伏せるのではない。長打4本を含む7安打を許したが、絶妙の配球とコーナーワークで2失点で切り抜けた。この継投コンビには夏を勝ち抜く粘りと安定感がある。


ランニング本塁打 馬場、投打に大車輪

【写真=前橋商―佐賀北】2回裏佐賀北2死三塁、馬場が中堅に同点の2点ランニング本塁打を放つ。捕手森沢=甲子園 
 「本業」があるから「打たなくても怒られることはない」という。ただ、その場面だけは「打者」に徹した。2回裏二死三塁。今大会3試合で8打数無安打だった佐賀北の8番馬場将史が左打席に入った。マウンドに立つ前橋商・佐々木に先制の2点本塁打を浴びた直後の打席。リベンジの思いをバットに込めた。

 カウント0-1からの2球目、外角高めの直球を中前にはじき返した。前進してダイビングキャッチを試みる中堅手。白球はそのグラブのわずか下をすり抜け、外野フェンスへと転がった。

 ダイヤモンドを疾走する馬場。「三塁で止まろう」とした矢先、三塁コーチャー野中将司が腕をぐるぐる回すのが視界に入った。「マジかよ」。スピードを緩めることなく本塁へ突入した。同点のランニング2ラン。単打狙いが一転「全く自信がない」という脚力でつかんだ一発。あとは「本業」に専念するだけだった。

 3、4回と前橋商打線に長打を浴びたものの、内、外角を丹念に突き、連打を許さない。「(先制本塁打を許した)スライダーも失投じゃなかったから」と自信を持って、相手打者と対峙(たいじ)していく。右打者の外に流れながら落ちるシンカー気味の変化球もさえ、6回表は二塁打を打たれた6番亀井、続く佐々木からいずれもその変化球で連続三振を奪った。

 投打に大車輪の活躍を見せ、県勢4年ぶりとなるベスト8に導いた164センチのヒーローは「まさかここまで勝てるとは…。でもここまできたら、もっと行きたいですね」。マウンド上で表情を変えることのない「ポーカーフェース」の表情が、少しだけ緩んだ。

【写真=佐賀北―前橋商】2回裏佐賀北2死三塁、馬場が中堅に同点の2点ランニング本塁打を放つ。捕手森沢=甲子園

 

 

佐賀北”攻めの犠打”―3連続バンドで追加点

 安打数はともに「7」。長打数は前橋商の4に対し、佐賀北は2。それでも3点差をつけて快勝した。違ったのは四死球と犠打の数。百崎敏克監督が「うちの生命線」と言い切るバントを確実に決めた佐賀北が、チームとしての総合力を見せつけ、ベスト8をつかみ取った。

写真
 まさに「攻めのバント」だった。佐賀北の選手たちが常に口にする「つなぐ意識」は、何もヒットを狙って次につなぐことではない。得点機に走者を置くことで相手投手にプレッシャーを与える意味を選手たちは理解する。そして、しっかりやってのける。2回から4回までの3犠打すべてを得点に結びつけた。

 圧巻は3―2で迎えた4回裏だった。次の1点がゲームの流れを大きく左右することは、「3点勝負」と話していた両監督だけでなく、選手たちも感じていた。

 死球で出塁した江頭英治を馬場将史が送る。馬場崎俊也が投前バント安打で続き、辻尭人がスクイズを決めた。その間、わずか6球。高めの直球という決してやさしい球ではなかったが辻はさらりと言った。「バント練習はずっと重点的にやってきた。普通にやればできること」。

 その回の表、長打でつくった一死三塁の好機で二者が凡退した前橋商との対照的な攻撃。この4回の攻防が結果として勝敗を分けた。

 打線は犠打だけでなくヒットエンドランや重盗を決め、守備でも2つの併殺を完成させ、無失策で投手陣を盛り立てた。大会前、「このチームにはまだ伸びしろがある」と話していた百崎監督は「技術面はもちろん、戦術の理解でも甲子園に成長させてもらっている」。大舞台で潜在能力を発揮し、1戦ごとにたくましさを増す佐賀北ナインがどこまで疾走するのか、まだ「ゴール」は見えない。

【写真=佐賀北―前橋商】4回裏一死一、三塁、1番辻がスクイズを決め、4|2とする=阪神甲子園球場

 

主将市丸、勝ち越し打―攻守に連日の活躍

写真

 頼れる主将のバットが、息を吹き返した。2―2の3回裏一死二塁。佐賀北の4番市丸大介は、前橋商・佐々木の初球を引きつけて右前へと運んだ。

 勝ち越しの適時打。「冷静沈着」を崩さない背番号2だが、さすがにこの場面は、一塁上で思わず拳を握りしめた。前日、宇治山田商(三重)との再試合でも8回に適時打を放ち、今大会初打点をマークしていた市丸。試合を重ねるごとに、4番の調子が上向いていることは、チームにとってこれ以上ない好材料だ。

 ただ、その後も浮かれることなく守りの要としての役割を全うする。「相手打線が外角球を踏み込んで打ちにきてたから」と内角も強気に攻める巧みな配球で馬場、久保をリード。7回表無死一塁の場面では、相手の9番打者

 「とりあえずベスト8までは行きたいと思っていた。対策通りの試合ができた」と市丸。「グラウンド上の監督」が攻守で快進撃を支えている。

【写真=佐賀北―前橋商】3回裏一死二塁、右前に勝ち越しの適時打を放つ4番市丸=阪神甲子園球場

 

田中、井手の二遊間コンビ―華麗な守備で貢献

 「相手投手に球数を投げさせて、中軸に球筋を見せるのが自分の仕事」と話す佐賀北2番の井手和馬。4回、勝ち越しの口火となる左前打を放ち、守備でも二塁田中亮とのコンビで華麗な併殺プレーを見せるなどチームの勝利に貢献した。

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 初回、7球を投げさせ四球を選んだ。「確かに緩急はある。しかし、直球のタイミングで待っても緩いカーブはカットできる」。3回はその直球を狙い、逆方向の左前に弾き返し、決勝点となったホームを踏んだ。

 8回は守備で見せた。一死一塁から中前に抜けそうな当たりを田中が好捕、絶妙なタイミングで二塁ベースカバーに入った井手は、流れるようなプレーで併殺を決め、スタンドからは「オー」という感嘆の声が上がった。

 打球のコースや速さなどあらゆるケースを想定し、2人で「毎日欠かさず練習した」という連係プレー。「理想は中日の荒木、井端選手の二遊間」という井手が、いぶし銀の打撃と守備で準々決勝もチームを締める。

【写真=佐賀北―前橋商】8回表前橋商1死一塁、金子の二ゴロで二封する遊撃手井手(右)。左は二塁手田中=甲子園

 

久保、また無失点―4試合好救援

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 「背番号1」はこの日も危なげなく、試合を締めくくった。佐賀北の右腕・久保貴大が7回無死一塁からマウンドに上り、3イニングを被安打1、無失点と好救援を見せた。甲子園の4試合、19回2/3でいまだ無失点。「しっかりと守ってくれる野手のおかげですよ」と笑いながらも、その表情には自分の投球への自信がのぞく。

 登板前、先発の馬場将史から「ストライクゾーンがちょっと狭いみたい」と短い「助言」をもらった久保だが、甲子園での快投を支える制球力からすれば、それほど気にすることではなかった。キレのいいスライダーで、前橋商打線を封じていく。9回は先頭の亀井から3球三振を奪った。

 再試合となった14日の宇治山田商(三重)戦以外、リードを奪ってからの登板が続く。「だからこそ1点もやれないという気持ちで投げている」「甲子園の印象? 人が多いなーという感じですかね」。試合を重ねるごとに安定感を増す右腕は、緊張感と平常心を失うことなくマウンドを守り続ける。

【写真=佐賀北―前橋商】先発馬場の好投を受け、3回を1安打無失点で切り抜けた久保=甲子園

 

 

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