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 佐賀商が粘る佐賀西を振り切り、2年連続14回目の甲子園切符を手にした。第88回全国高校野球選手権県大会決勝は26日、佐賀郡久保田町のみどりの森県営球場であった。

 佐賀商は初回、山口の適時三塁打で先制。3回には2四死球に3安打を絡め一挙4点を追加した。佐賀西も4回に1点を返し、7、8回にも合わせて3点を奪い、5―4と1点差に詰め寄ったが、8回に佐賀商が5安打を集中、5点を挙げ逃げ切った。

2006年7月26日 決勝


佐賀商10-4佐賀西  (みどりの森県営球場 13:00試合開始)

 

佐賀西

0

0

0

1

0

0

2

1

0

4

佐賀商

1

0

4

0

0

0

0

5

10


                       (佐賀商は2年連続14度目の優勝)
【佐賀西】 【佐賀商】
田中、山下-北川 大隈、吉田、大隈-山口
▽二塁打 北川、木山 ▽三塁打 山口▽二塁打 今村、大隈
  

佐賀商 終盤突き放す-8回集中打5点

写真
【佐賀西―佐賀商】佐賀商8回裏2死満塁、1番沼田が右前に2点適時打を放ち、8―4と突き放す=みどりの森県営球場(撮影・原田)
 佐賀商打線が勝負どころを逃さない集中力を発揮し、粘る佐賀西を振り切った。1点差に詰め寄られた8回裏、死球を足掛かりに一死一、三塁の好機をつくると、西村が中前へしぶとくはじき返し6―4。続く堀のプッシュバントが敵失を誘いさらに一死満塁と攻め立てる。飯田は倒れたが、1番沼田から上位打線が3連打を連ね、この回5点。流れが佐賀西に傾きかけた直後だっただけに大きかった。

 先発大隈は6回まで要所を締め1失点だったが、7回に3失点とつかまり降板。後を受けた2番手吉田も制球に苦しみピンチを招く。8回、1点差まで迫られ、なおも二死満塁。ここで再びマウンドに戻った大隈は落ち着いた投球で後続を断ち、9回も無安打で締めた。

 佐賀西は7回表、北川、木山が適時二塁打を放つなど得意の長打攻勢で反撃。8回には押し出しで1点差に詰め寄るなど最後まで意地を見せた。ただ、6回まで散発2安打と打線が振るわず、前半に攻撃の糸口がつかめなかったことが響いた。

ハイライト

○ナイン結束 奮起

 思わぬアクシデントが、ベンチを襲った。1点差に詰め寄られた8回裏。佐賀商の主将で遊撃手の中山亮が上半身を小刻みに震わせ、「過呼吸」の状態に陥った。

 酷暑、緊張感の中で、チームを鼓舞し続けてきた。「絶対に嫌だ。最後までここにいさせてください」。担架に載せられながらも泣いて訴える精神的支柱の姿に、チームメートが発奮する。五回から3イニング連続で三者凡退に終わっていた打線が再び、目を覚ました。7番西村昂樹の中前適時打で6―4。1番沼田和也から3連続適時打でたたみ掛けた。

 佐賀西の執拗(しつよう)な追撃。攻撃陣は変化球主体の組み立てに切り替えた佐賀西投手陣に苦しみ、剣が峰に立っていた。そんな時の緊急事態は「中山に優勝旗を持たせてやる」と、ナインの結束力を高め、ビッグイニングにつながった。

 昨年は2年生主体で夢舞台に挑んだが、0―11、わずか1安打で甲子園を去った。中山、沼田ら昨夏からのメンバーは「雰囲気にのまれ、何もできなかった」。「惨敗」の記憶、屈辱を胸に刻み、年末の和歌山合宿では1日20キロのランニング、浜辺でのダッシュなど練習に耐えた。「(甲子園に)行くんじゃない、勝つんだ」。それがナインの支えだった。

 閉会式で、グラウンドに戻ってきた中山が言った。「昨年は出ることで満足だったけど、ことしは違う」。この1年でさらにたくましさを増した伝統校が、白星という忘れ物を取りに「球児たちの聖地」へと旅立つ。


写真
【佐賀西―佐賀商】9回表、最後の打者の打球を見てこぶしを上げる佐賀商のエース大隈=みどりの森県営球場
 ○大隈再登板ピンチ断つ

 5―4と1点リードの8回二死満塁。一打逆転のピンチで「再登板」した佐賀商のエース・大隈浩は「絶対に抑える」と、気合を入れて、左翼からマウンドに向かった。

 打者は佐賀西の1番川越。四球も許されない場面で、初球がシュート気味に外角低めに外れる。「低めに外れる分はいい」。制球に不安はなかった。2球目も同じ外角低めの直球。川越が打った打球は、中堅西村のグラブにすっぽり収まり、最大のピンチを切り抜けた。

 昨年、甲子園のマウンドに立った。9回の1イニングだけだったが「大舞台でも動じない気持ちができた」。その経験がこの大事な場面で生きた。

 佐賀商を連覇に導いた右腕は「コースをついて打たせて取る投球に徹し、昨年の雪辱を果たす」と、1勝への決意を口にした。

○西村、親子2代「甲子園」へ

 8回裏一死一、三塁。佐賀商の7番西村昂樹は外角直球をたたいた。「みんながいいところで回してくれた。どうしても打ちたかった」。打球はしぶとく中前へ抜けていった。6―4とリードを広げる貴重な一打に、日焼けした顔をほころばせた。

 父親は鹿島実の西村秀範監督。監督自身も佐賀商OBで、1977年の第59回大会で昂樹と同じ中堅手として甲子園の土を踏んだ。前日の準決勝で無安打に終わり、落ち込む昂樹への父親のアドバイスは「最後なんだから楽しんでこい」だった。

 同じ「SASHO」のユニホーム、背番号「8」での甲子園出場。「チャンスで1本」と意気込む昂樹に、「あの大舞台で高校野球を“卒業”できる喜びを感じてほしい」。29年前の自分と重ね合わせながら、父親はうれしいエールを送った。

写真
【佐賀西―佐賀商】佐賀商8回裏2死一、三塁、2番今村が中前適時打を放ち9―4とする=みどりの森県営球場

 ○不調今村 発奮3安打

 準決勝までの4試合で1安打。極度の不振にあえいでいた佐賀商の2番今村弘法が3安打1打点と、大一番で気を吐いた。

 3回裏一死走者なし。真ん中に入ってきたシュートを「上からかぶせることができた」。打球は左翼手の頭を越える二塁打。この長打をきっかけにチームはこの回4点。ビッグイニングの呼び水となった。

 8回には待望の適時打も飛び出す。「今まで形にこだわりすぎていたけど、とにかく球に食らいつこうと思った」。決勝前夜も自宅で父親とトスバッティングで汗を流した今村。試合前、「キーマン」として名前を挙げた田代孝監督の期待に応えた。

 初回は佐賀西の1番川越の右翼線への痛烈な打球を好捕。最終回もファウルフライをスタンド前でスライディングキャッチするなど守備でも貢献した。「甲子園でもこの勢いを大事にしたい」。攻守に全力プレーが身上の2番打者は大舞台での活躍を誓った。

「全国1勝」目標に―佐賀商・田代孝監督
 追い上げられ苦しい展開だったが、8回は粘り強い攻撃で一気に突き放してくれた。昨夏は甲子園に出場したものの初戦敗退。主将の中山を中心に「全国1勝」を目標にやってきた。この瞬間からしっかりと準備をして大舞台に臨みたい。

佐賀西猛追あと一歩―全員一丸 最後まで堂々

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一時は1点差まで追い上げたが、あと一歩及ばなかった佐賀西。試合後、涙を浮かべベンチに引き揚げるナイン=みどりの森県営球場

○「1点ずつ」姿勢貫く

 序盤で5点のリードを許した。名門校の重圧に押しつぶされそうになりながらも、佐賀西の内田努監督は笑顔を絶やさなかった。「1点ずつ取りに行くぞ」と、声を掛け続けた。

 その思いはナインに伝わる。5点差の4回無死一塁では送りバント、4点を追う7回には一死一塁からエンドランを成功させ、得点に結びつけた。点差があっても、走者を1つでも先に進める姿勢を貫いた。全員で追い上げムードをつくりあげた。

 1点ずつ積み重ね、8回には二死満塁から代打・古賀飛鳥が押し出し四球を選び、4―5。「流れをつかんでいたし、9回には逆転できる自信があったが…」と内田監督。序盤の敗戦ムードを振り払い、昨夏の覇者に詰め寄ったが、力尽きた。

 秋、春の県大会はともにベスト8。6月のNHK杯で準決勝に進出したものの、佐賀商に11―1でコールド負け。シードにもなれず、下馬評は決して高くなかった。3つの大会で優勝した昨年のチームと比べられ、“残像”に苦しんだ時期もあったが、最後の夏は先輩たちを上回る準優勝。内田監督は涙をいっぱいためながら「大会を通して選手たちは大きく成長してくれた」と、ナインをたたえた。

 レギュラーのうち、2年生は今大会2本塁打の岸川和平ら4人。「(3年生は)どんな時だって前向きだった」と岸川。“苦しいときこそ笑顔”のチームカラーは新チームの財産として受け継いでいく。


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7回表一死一塁から8番北川の右翼線二塁打で生還する貞島(右)=みどりの森県営球場
 ○三塁手貞島、攻守でチームけん引

 0―5とリードを広げられた3回裏。なおも二死三塁から三遊間に飛んだ痛烈な打球を佐賀西の貞島健人三塁手が横っ跳びで好捕。素早い送球で追加点を許さなかった。佐賀商に一方的に傾いた流れを食い止めた。

 「絶対に抜かせない」。思いは誰よりも強かった。NHK杯の佐賀商戦。三遊間の当たりを何本もヒットにしてしまい結果的にコールド負けを喫した。この日の決勝ではファインプレーに、2安打1四球1犠打でチームを引っ張り、追い上げムードをつくった。

 9回二死一、二塁でめぐってきた五打席目には鋭い打球を二遊間に放ったが、好守に阻まれゲームセット。「ずっと投げている(田中)宏典に何もしてやれなかった」。泣きくずれる貞島の肩に、田中が手を回した。

 

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序盤、制球に苦しみながらも力投を続ける佐賀西のエース田中(左)=みどりの森県営球場

○エース田中、昨夏の雪辱ならず

 球がうわずり、カウントを取りにいった球を痛打された。佐賀西のエース田中宏典は、立ち上がりの3回までに5失点。昨夏、準決勝で敗れた佐賀商に“リベンジ”はならなかった。

 初回二死一塁でボーク。すかさず直球をはじき返され先制を許す。「外を狙った球が内に入った」と田中。3回には打者8人に対し、初球すべてがボール。カウントを整えようと投じた球を佐賀商は見逃さなかった。あっという間の4失点。その後は立ち直り、チームも追い上げただけに、「もっと丁寧に投げないといけなかった」と唇をかみしめた。

 昨夏、チームで唯一、2年生レギュラーとして出場。準決勝で佐賀商に敗れた試合では一打サヨナラの場面で打席に入ったが凡退。悔しさが忘れられなかった。新チームでは主将を任され「佐賀商を倒し甲子園」。ナイン全員で目標を掲げ、この日の決勝まで駒を進めた。

 思いはまたしてもかなわなかったが「全力で野球に打ち込めたので悔いはない」と田中。言葉を詰まらせながら、胸を張った。