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8月30日付
 フランス19世紀の詩人マラルメは毎週火曜日の夜、パリの自宅に若い芸術家を集めて話をした。画家のマネやゴーギャン、文学者のジッドやヴァレリー、音楽家のドビュッシーらはマラルメを尊敬し、その影響を受けた作品を生んだ◆例えばドビュッシーの有名な管弦楽曲「牧神の午後のための前奏曲」は、マラルメの長大な詩「牧神の午後」にインスピレーションを受けて書かれたものだ。これほど影響力の強い詩人なのに、マラルメが日本で今ひとつ人気がないのは、その詩が難解すぎるからだろう◆神埼市の僧侶吉岡誠二さんは、大学時代にマラルメに傾倒して詩を書いてきた。今月、若いころからの作品を集めた詩集「森の泉」(アピアランス工房)を出した。収録されているのはわずか23編だが、吉岡さんが「自分の人生はこの1冊の詩集をつくるためにあった」というほど、思い入れの深い詩集だ◆「君が森の方へ出かけていくのを見て、僕はついて来たのだが、エナガがジュリジュリとくぐもった声で鳴き、曇り空の下の森は影を帯びて…」(曇り空の森)。詩には冷たく濡れた森のイメージと、泉のそばにたたずむ女性のイメージが何度も登場する◆吉岡さんの詩は、マラルメほど分かりにくくはない。しかしマラルメが大切にした言葉の音楽性やイメージの連想は、作品に生かされている。吉岡さんのマラルメ研究はまだ続いているそうで、1行の詩の謎を解くのに10年以上かかることもあるそうだ◆筑摩書房から出ている「マラルメ全集」全5巻は、翻訳が困難で、20年以上をかけてことしやっと完結した。フランスから遠く離れた佐賀にも、この難解な詩人に取り組んで詩を書いている人がいると思うと、なんだか愉快である。(園)