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8月22日付
  佐賀市歴史民俗館の一本南の通りに「肥前通仙亭(つうせんてい)」が開館して約2カ月がたつ。白壁に3段の瓦屋根が感じがいい。佐賀市の地場産品を販売するとともに、江戸時代に佐賀藩蓮池支藩に生まれ、京都で煎茶(せんちゃ)を広めた黄檗(おうばく)宗の僧・高遊外売茶翁(こうゆうがい・ばいさおう)の功績を紹介している◆佐賀出身の偉人の中でも、この売茶翁ほどつかみにくい人物はいない。60歳を超して、京都の大通りや河原に茶道具を担いで行っては煎茶を売っていた。「ただで飲むのも勝手、ただよりほかはまけ申さず」と言っていたそうであるから、まったくのボランティアだったのだろう◆しかし、身分の上下に構わずお茶を出し、禅の話もしていたとしても、それが後世に語り伝えられるほどの偉業だろうか。当時の傑出した変わった人物を集めた伴蒿蹊(ばんこうけい)の「近世畸人(きじん)伝」は、売茶翁に大きくページを割いている。何かもっと大きな魅力があったのではないか◆最近大人気の画家伊藤若冲ブームの火付け役として知られる同志社大学教授の狩野博幸さんが、月刊「文藝春秋」8月号に「伊藤若冲新発見でお詫び行脚するの記」を寄せ、若冲と売茶翁の結びつきを書いている。売茶翁はやはり単なる煎茶売りではなかった◆狩野さんは、当時の知識人であった僧職の売茶翁が煎茶売りの商いをすることで、徳川幕府の「士農工商」の階級制度に風穴を開けた、とみる。建前だけを述べる知識人に行動することで衝撃を与えたというのだ◆売茶翁を慕ったのは若冲だけではない。池大雅、与謝蕪村、上田秋成らが、何らかの形で売茶翁の影響を受け、新しい芸術を生み出した。肥前通仙亭はNPO「高遊外売茶翁顕彰会」が運営。「さがおもしろ学講座」なども企画している。停滞する佐賀の文化状況にも風穴を開けてもらいたい。(園)