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どこにでもいる「俊足」ではない。チーム一の韋駄天(いだてん)には、本塁を陥れるだけの自信と勇気があった。7回裏一死三塁。代走として登場、3塁まで進んだ佐賀北・内川聖弥は、1番辻尭人の左翼への浅い飛球を見ながら思った。「見せ場だ」。グラブに白球が収まると同時に、27・43メートル先の「標的」めがけて突っ走った。
返球はわずかに一塁側にそれた。捕球した長崎日大の捕手・上戸のタッチをかいくぐって、左手の指先でベースタッチした。一瞬の間。主審の両手が、水平に広がった。地鳴りのような大歓声が起きた。
タッチアップをかけるには、あまりにもリスクが高い浅いフライ。だが、50メートル走5秒9のスピードに加え、「アウトのタイミングでも体を反らすとか、のけぞって何とかセーフにするという走塁練習をしていますから」。百崎敏克監督も「あの場面で突っ込まなかったら、使った意味がない」。絶大の信頼を置くスピードと判断力を発揮した背番号14を、そんな表現でたたえた。
7月初旬の県大会直前。原因不明の40度近い高熱が続き、1週間の入院生活を余儀なくされた。中堅のポジションを争う馬場崎俊也も故障気味でレギュラーの座を奪う「チャンス」だっただけに落ち込んだ。
だが、甲子園に入ってからも、その「足」を生かせる日が来ることを信じて、一塁コーチャーボックスから相手投手のけん制や投球モーションなどを観察し続けた。犠飛でのタッチアップにつながった無死一塁からの単独スチールも「相手投手の投球練習を見て、モーションが大きかったからいけると思った」。
出場機会が限られる控え選手。だからこそ「ワンチャンスにかける思いは、本当に強いんです。決勝も足で見せることができたらいいですね」と内川。聖地での快進撃が止まらないチームには、レギュラーに負けない輝きを放つベンチメンバーがいる。
【写真=佐賀北-長崎日大】7回裏1死三塁、1番辻のレフトへの犠牲フライで、三走内川が相手捕手のタッチをかわし生還、3-0と突き放す=甲子園
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