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最終章 ここで生きる[8] よそ者の力(中)

2015年03月29日 09時43分

移住支援の取り組みを説明する大南さん(奥)。視察者は年間2000人を超える=徳島県神山町
移住支援の取り組みを説明する大南さん(奥)。視察者は年間2000人を超える=徳島県神山町
最終章 ここで生きる[8] よそ者の力(中)

■あこがれより人生設計 

 「田園回帰」志向の広がりを、どう地方の人口減対策に結びつけていくか。四国・徳島県神山町。人口6千人、高齢化率47%を占めるこの山あいの町に2007年以降、首都圏などから平均年齢30歳の69世帯115人が移り住んでいる。町の委託で移住施策を担ってきたNPO法人「グリーンバレー」の取り組みは、「よそ者」の力を取り込むことで、まちづくりそのものを変革させた先駆例として全国から注目を集める。

 もともとPTAの有志で地域おこしをしていたグリーンバレーは1999年、芸術を柱とするまちづくりに着手。アートに興味のあったメンバーの発案で、日本人1人、外国人2人の芸術家を2カ月間招待し、創作活動をしてもらった。

 それが呼び水となって、町に移住する芸術家が出てきた。「アートの町」をPRするウェブサイトがきっかけで、東京の大学の研究室と連携し、若いクリエーターたちと空き家再生にも取り組んだ。それがIT企業社長の目に留まり、空き家をオフィスにしたITベンチャーの進出が相次ぐ。現在、町内にサテライトオフィスや本社を構える企業は12社に上る。

 「あくまで町に必要な人材に来てもらう」。グリーンバレー理事長の大南信也さん(61)は取り組みの基本理念をそう語る。移住者を決める上で重視するのは「田舎暮らしへの思い」ではなく、仕事や将来の夢など「人生設計」だという。面接や空き家の案内をする過程で「人」を見極める。「考え方がしっかりしている人は周囲を動かす力があり、地元にもいい刺激を与えてくれる」

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 東京で移住情報を発信する「ふるさと回帰支援センター」で今年1月、初めてのセミナーを開いた杵島郡江北町は、上小田地区で「空き家に暮らす」をコンセプトにまちづくりを進めている。移住希望者が日常生活をイメージできるようリフォームした「モデル住宅」を提示するという。

 移住施策は地元にとって、どうしても「待ち」の姿勢になってしまう。佐賀県内でも移住希望者に居住情報を提供する「空き家バンク」を開設している自治体は多いが、ほとんど利用がないのが実情だ。問い合わせがあっても、長年人の手が入らず、荒れている空き家が多く、魅力ある居住先として提示するのは難しい。

 このため同町は「ものづくりに取り組む人材」にターゲットを絞り、「待ち」から「攻め」の取り組みを模索する。「雇用の場が乏しい地域だからこそ、手に職のある新しい感覚を持った人たちに町を引っ張ってほしい」。町総務企画課の坂本弘睦さん(45)は意気込んだ。

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 「人」を重視した移住施策がITベンチャーの誘致をもたらし、地域の付加価値を高めた徳島県神山町。今ではピザ職人、有機食材の料理人、映像作家、建築家など、多彩な職人やクリエーターが集う。「移住希望は150人待ちぐらいかな」と大南さん。人脈を持つ人材が、さらに新しい人材を呼ぶ好循環が生まれている。

 徳島県神山町 人口5959人。面積の8割以上を300~1500メートル級の山林が占める。高地にある四国八十八カ所霊場の第12番札所・焼山寺は遍路道の難所として知られる。

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