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最終章 ここで生きる[6] 産業創出(下)

2015年03月27日 09時26分

廃校となった小学校校舎を活用して地域自主組織がオープンさせた「波多マーケット」。地域内の利用を促すことで小さな商圏でもビジネスとして成立することに成功した=雲南市掛合町波多
廃校となった小学校校舎を活用して地域自主組織がオープンさせた「波多マーケット」。地域内の利用を促すことで小さな商圏でもビジネスとして成立することに成功した=雲南市掛合町波多

■「おらが店」呼び込む工夫 

 杵島郡大町町の中心商店街。地元商工会が空き店舗を活用して開設した「ふれあい茶屋」が3月末でシャッターを下ろすことになった。

 同町では2012年2月、町内唯一のスーパーが閉店。近隣の市町に大型店やディスカウント店が進出し、町内の消費者を奪われている現状では、新たな出店は望めない。幹線道路から離れた山手に旧炭鉱時代の住宅が立ち並び、高齢化率34・1%と県内で最も高い同町にとって、買い物弱者対策は急務だった。

 このため、「ふれあい茶屋」は町内の商店と連携し、食料品の宅配事業をスタート。しかし、顧客は高齢者が中心のため、客単価は1人400円前後と少額なうえ、限られた商品構成のため利用者が限られ、売り上げは低迷した。

 独立採算が見込めないまま、国の補助金の期間満了で事業継続は困難に。「困っている人は確実にいるのに手を差し伸べられない」。町商工会の経営指導員白濱幸広さん(56)には、やりきれない思いだけが残った。

 人口減少で市場規模の縮小が進む中、交通の利便性も悪い地域では今後、商店や企業の撤退がますます進む。

 小学校校区ごとの「地域自主組織」と呼ばれる地縁団体でソーシャルビジネスを展開する島根県雲南市には、住民の手でスーパーマーケットを設立したケースもある。

 掛合町波多地区。豪雪地帯で人口400人を切り、高齢化率は49・7%。独居世帯も2割弱を占め、商圏として決して魅力的とは言えない山村だ。

 昨年3月、大町町と同様に地区唯一の食料品を扱う商店が閉店、移動販売や宅配事業者の利用を促したが、定着しなかった。このため、住民自身での店舗開設を計画。金融機関から資金を借り入れる一方、地区出身者らに寄付を募った。統合で廃校になった小学校の空き教室を活用してオープンにこぎつけたのは昨年秋のことだ。

 目指したのは市街地のスーパーと遜色のない品ぞろえ。国内最大手のボランタリーチェーンに加盟し、少量でも手ごろで多様な商品構成を実現。宅配サービスなどでは得られない、商品を実際に手に取る楽しみが幅広い世代を引きつける。

 店舗を構えて客を「待つ」のではなく、積極的に「呼び込む」仕掛けもユニークだ。自ら福祉タクシーを運行し、スーパーで買い物すれば片道は無料に。映画の上映会を企画したり、喫茶コーナーを設けるなど、かつての学びやで過ごす楽しいひとときを住民に提供している。

 「自分たちの店という意識は確実に高まってきた」と波多コミュニティ協議会の山中満寿夫会長(69)。開店半年で売り上げは月100万円ほど。収支は黒字で推移している。

 ことさらな「買い物弱者対策」ではなく、住民に「楽しさ」を提供することが経営を安定させ、弱者対策にもつながる。そんな取り組みが、この地域で暮らす人たちを将来にわたって支え続けることができるか。住民たちの挑戦はまだ始まったばかりだ。

 ■地域自主組織 自治会や町内会、婦人会などの地縁組織を統合して地域振興や課題解決に取り組む自治組織。人口減社会の担い手不足を解消する手段として各自治体で導入が進められている。雲南市などの呼びかけで、今年2月に小規模多機能自治推進ネットワーク会議を設立。全国148自治体と4団体・個人が参加し、県内から佐賀、嬉野、小城、唐津が名を連ねている。

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