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オスプレイ容認

漁業者を孤立させるな

2017年07月15日 05時01分

 自衛隊が導入する新型輸送機オスプレイの佐賀空港への配備をめぐり、佐賀県の山口祥義知事が受け入れの姿勢を示した。配備予定地の地権者を含む漁業関係者との調整に乗り出す構えだが、これで県民に寄り添った判断と言えるだろうか。

 なぜ、事実上の容認に至ったのか。いくつもの疑問がある。

 山口知事は13日の会見で、県議会の受け入れ容認決議にふれて「極めて重い」と、判断の根拠を決議に求めた。県議会を県民の代表と位置付け、その意思を尊重したという形だが、この県議会決議そのものが大きな疑問符付きだ。

 というのも、佐賀空港は1998年の開港に当たり、県と漁業者の間で「自衛隊との共用はしない」という協定を結んでいる。2010年になって、沖縄・米軍普天間飛行場の移転先として佐賀空港が取り沙汰された時、県議会はこの協定に基づいて「軍事利用できないことは明らかである」と決議した経緯があるからだ。

 先日の受け入れ容認決議は、これをほごにする内容であり、二つの決議は矛盾する。防衛省が描いたスケジュールを念頭にした動きであり、県民の賛否が割れている現実に目をつむったと批判されても仕方ないだろう。

 知事がそこに論拠を求めようとしても説得力に欠けると、まず指摘しておきたい。

 今回の発言がどうにも理解できないのは、漁業者が自ら意見統一を図ろうとする、その矢先のタイミングだったことだ。

 これまでの経緯を考えれば、漁業者の間には反対意見が根強く、全体が「反対」でまとまる可能性もある。そこで、先手を打つ形で県として「受け入れ」を表明し、漁業者の判断に働きかけようという狙いがあるのではないか。

 知事は自らを「国防に協力する立場」とする一方で、「漁業者の思いを大事にしなければ」と苦悩をにじませた。漁業者との信頼構築を目指すのであれば、受け入れありきではなく、「白紙」に戻して、合意形成のプロセスを踏むことが大事ではないか。

 今回のオスプレイ配備計画は、国防が絡んでおり、非常に重いテーマであるのは間違いない。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しているという現状認識も、広く共有されているだろう。

 だが、これは国策だから仕方ないと思考停止に陥って、ムードに流されるのは避けたい。

 そもそも、なぜ佐賀空港が選ばれたのかという根本的な疑問でさえ、十分には説明がなされていない。いくつの空港が候補に上げられ、どのような理由で佐賀空港に絞られていったのか、その過程もはっきりとは明かされないままだ。

 加えて、隣県の柳川市などからも懸念の声が上がっている。もはや、佐賀県だけの問題ではない。

 最大の不安は、自衛隊の配備計画という体裁をとってはいるが、将来、米軍機まで受け入れる状況に追い込まれかねないという点だ。まさに、「自衛隊による軍事利用」が現実となってきたように、今の時点でどのような歯止めをかけたとしても、なし崩しにされる恐れが強い。

 今を生きる私たちには将来世代への責任がある。このまま強引に進めるようでは、禍根を残すのではないか。(古賀史生)

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