現在位置:

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

働き方改革

職場の検証から始めよう

2017年05月18日 05時00分

 過労死や長時間残業などが社会問題となる中、「働き方」への関心が高まっている。政府は働き方改革の実行計画をまとめたが、実効性のある改革を進めるため、それぞれの企業、職場で改善策を考えていきたい。

 来年春に卒業する大学生の就職活動が本格化している。選考活動を前に開いた佐賀新聞社の会社説明会で、編集局の業務について話す機会があった。その際、学生からは仕事の内容だけでなく、「休みは取れますか」「夜遅くまで残業することは多いですか」などの質問を受けた。学生たちは決して「楽な仕事」を望んでいるわけではないが、労働環境・労働条件を巡るさまざまな問題を受け、敏感になっていると感じた。

 これまで日本の経済発展は、勤勉さや長時間労働に支えられてきた面があるのは確かだろう。しかし、それに頼って無理を続ければ、ひずみが生じる。「ワークライフバランス」の考えが浸透してきた中で、社員が健康を害するような企業には人材も集まらない。

 これから日本の労働力人口は、確実に減少していく。企業の成長を維持するには働き方を見直し、効率を高めて生産性を伸ばす新たな取り組みが求められる。単に労働時間を巡る労使間の争いと捉えず、働き方改革が叫ばれる背景をしっかりと踏まえ、着実に改善を進める必要がある。

 政府の実行計画は、罰則付きの残業時間の上限規制や「同一労働同一賃金」などが柱となっている。このほか、テレワークなど柔軟な働き方の環境整備、子育て・介護と仕事の両立、高齢者の就業促進など幅広い内容が盛り込まれている。労働政策審議会で関連法の改正案をまとめ、政府が年内に国会へ提出、早ければ2019年4月から順次施行される見通しとなっている。

 残業時間の規制では、月45時間、年360時間を原則的な上限とした。特例で繁忙期は単月で100時間未満、2~6カ月続く場合は月平均80時間以内、年間で計720時間以内としている。上限の設定は長時間労働の是正の第一歩ではあるが、実際に月80時間の残業が6カ月続くとすれば相当な負担になる。「上限までは残業させても問題ない」という誤った認識が広がらないようにしたい。

 こうした法規制を整えることは重要だが、実効性を高める具体策が肝心だ。残業時間の規制をはじめ、多様な働き方の推進など実行形計画の目標はおおむね賛同を得られる内容だろう。その実現に向け、政府は各業界や企業の取り組みに対する具体的な支援策を示していってほしい。

 同時に、各企業や職場でも何を、どう取り組むか、真剣に話し合っていきたい。従来の意識を変え、積極的に向き合う姿勢がなければ働き方改革の実現は難しい。単に残業時間を減らせば、生産性、業績の低下につながるのは明らかだろう。現場の実態を踏まえた業務改善や勤務体制、人員配置の見直し、今後の戦略など総合的な検討が欠かせない。

 働き方改革は労働行政や経営側だけの問題ではなく、働く人たちの問題でもある。一朝一夕にはいかないが、まずは各企業、職場で課題を洗い出し、知恵と工夫で一つ一つ改善できることから始めていきたい。(大隈知彦)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

記事アクセスランキング

明治維新150年