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再稼働知事同意

県民の不安は拭えたか

2017年04月25日 05時00分

 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に、佐賀県の山口祥義知事が同意した。「原子力発電に頼らない社会を目指すという強い思いを持ちつつ、現状においてやむを得ないと判断した」と述べたが、果たして県民の不安は拭い去れただろうか。

 同意に至るまでの過程を振り返ると、県民説明会を5カ所で開いたほか、県内の各首長から意見を聞き、県議会から容認の決議を受けた。各団体の代表でつくる「広く意見を聴く委員会」を立ち上げ、専門家による部会からも助言を受けた。最終的には現地視察した世耕弘成経産相に対し、国の監督強化など6項目の要請もした。

 外形的には、一つ一つの手順を踏んできたと言っていい。

 だが、「アリバイづくりだ」という批判がつきまとったのはなぜか。それは知事が常々、安全性の確認と県民の理解が前提だと強調しつつも、「再稼働はやむを得ない」という基本的な立場を表明してきたからだろう。

 加えて、「地元同意権」を巡る発言も大きかった。

 現在の枠組みでは、エネルギー基本計画で「地元の理解を得ながら進める」としている。今回の知事の同意にしても、この枠組みに沿って表明したわけだ。

 これに対して知事は「(自治体に)同意権は存在していない」と述べてきた。法的に定められていないという指摘であれば、その通りではある。

 だが、原発立地県としては、いかに発言力を強めるかに心を砕くべきではなかったか。全国の自治体首長らでつくる「脱原発を目指す首長会議」が「立地自治体や周辺自治体の立場を弱める悪影響を及ぼす」として、発言撤回を求める緊急声明を出したのも当然だろう。

 そもそも原発再稼働は国策として進められてきた。私たち県民の不安に寄り添い、その声を代弁し、ブレーキ役を果たせるのは、国ではなく、県民の代表である知事しかいない。

 県民の声に耳を傾ければ、不安の声は根強いし、県民説明会でも反対が圧倒的だった。原発30キロ圏に立地する伊万里市をはじめ、長崎、福岡両県の周辺自治体からも反対の意思表明が相次いでいる。

 いくつもの課題が取り残されたままではないか。

 過酷事故が起きたときに原子力容器の圧力を逃がすフィルターベントは、いまだに設置されていない。緊急時対策棟は完成時期さえはっきりしない。使用済み核燃料の貯蔵プールはわずか5年程度で満杯になるというのに、どうするのか。住民の避難計画にしても実効性は疑わしい。

 この先、県内には国策絡みの重いテーマがいくつも待ち構えている。新型輸送機オスプレイの佐賀空港への配備計画や国営諫早湾干拓事業(長崎県)の開門問題などである。国策だからといって、国の意向をそのまま受け入れるようでは困る。たとえ、国と対立する局面を迎えようとも、私たちの代表として対峙(たいじ)する姿勢を見せてほしい。

 地元同意のくびきが外され、玄海原発は再稼働へと一気に走り出す。後は国任せというわけにはいかない。知事には引き続き、県民の不安を拭い去る努力と覚悟が求められる。(古賀史生)

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