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高齢者虐待の防止

介護者を孤立させるな

2017年04月20日 05時00分

 家庭や介護施設での高齢者の虐待が問題になっている。虐待防止へ介護環境の改善とともに、ストレスなどが原因で虐待してしまう介護者のケアも不可欠だ。高齢者とその介護にあたる人たちが不幸な事態に陥らないよう、地域の人たちの理解や行政、介護関係者によるきめ細やかなサポートが求められる。

 佐賀県が、先月発表した2015年度県内の高齢者虐待は52件。このうち家族や親族、同居人によるものは45件、介護施設の職員らによる虐待は7件だった。厚生労働省が発表した全国の件数では、家族・親族による虐待が1万5976件、施設などでの虐待が408件だった。自治体への通報などで把握された件数であり、実態はより深刻とみるべきだろう。

 有識者などでつくる「高齢者虐待防止ネットワークさが」が09年、在宅介護を行う家族を対象にした調査によると、家庭で高齢者虐待が起きる原因(複数回答)は、「介護疲れや介護によるストレス」83.8%、「介護者が孤立し協力者がいない」47.5%、「被介護者の認知症による言動の混乱」43.7%などの回答が多く、「経済的困窮」も24.3%だった。高齢者虐待は、家族との関係や経済的問題など、さまざまな要因が絡み合って発生しており、その背景に注目する必要がある。

 在宅介護者を抱える家族の負担は大きく、不満のはけ口としての虐待が、さらに増加することも予想される。高齢者虐待は誰にでも起こりうる問題と捉える必要がある。ただ、虐待は人としての権利や尊厳を奪うもので決して許される行為ではない。対策が急務だ。

 高齢者虐待への対応は、虐待を受けている高齢者や介護に疲れた家族のサインに、周りがいち早く気付くことが大切だ。介護をしている家庭への声かけや見守りなど、地域の人たちの気配りが、虐待防止につながる。県内16市町では、民生委員らを核とした「見守りネットワーク」を組織している。これら公的な見守り活動が、有効に機能することも重要になる。08年に県内で最初に高齢者虐待防止マニュアルを作成した小城市では、チェックシートを導入し成果をあげている。

 介護疲れが原因の虐待では、介護施設のショートスティなど介護サービスが適切に利用されていれば防げたケースもある。自治体の福祉課や地域包括支援センターなどに相談し、専門家のアドバイスを受けて介護の負担を減らしたい。介護者自身が介護の苦労を一人で抱え込まないことが重要だ。

 高齢者虐待を防ぐ方策には、家庭内での権利意識の啓発や認知症などへの理解、適切な介護のための知識を得ることがあげられよう。自治体などによる介護者への教育機会の提供が求められる。

 また、介護や福祉関係者による積極的な働きかけも有効だ。実際に家庭内虐待の発見で力になるのは、要介護者との接点の多い、ケアマネジャーや現場の介護従事者である。専門家からの視点で、リスク要因を減らす提案など、虐待を未然に防ぐための日々の取り組みにも期待したい。

 孤立しがちな高齢者とその介護者を、地域の力と公的サポートで支え、高齢者が尊厳を持って安心して暮らせる社会づくりを目指していきたい。(田栗祐司)

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