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学び支える奨学金

リスク理解し、学ぶ意欲に

2017年03月20日 05時00分

 入学の春を迎えた。晴れて進学が決まった学生の学費や生活費など経済面で支えてくれるのが奨学金だ。近年、その返済が負担となり、若者を苦しめる事態が問題となっている。学生と保護者それぞれが奨学金の仕組みやリスクを理解し、進学する目的や意義を共有することが大切だ。

 佐賀新聞社が1月、佐賀大と西九州大(神埼市)の学生109人を対象に実施した調査では、自宅生の43%が奨学金を受けており、うち3割が月額8万円以上だった。自宅外生は75%が奨学生で、そのうち3割が月額10万円以上だった。自宅生の割合が比較的高い地元の大学でも、奨学金が多くの学生の学びを支えている実態が明らかになった。

 現在、日本の大学生のほぼ半数に当たる132万人が日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金を利用しており、そのほとんどが返済義務のある「貸与型」だ。貸与型奨学金は事実上の「教育ローン」と化しており、学生は卒業時に平均300万円超の借金を抱える。大学を卒業したら、数百万円の借金返済が始まる形だ。

 卒業後に安定収入を得られればよいが、そうでなければ返済が厳しくなる。いまや職を得ても生活安定が図られる保証はなく、非正規雇用の拡大で返済に苦しむ若者は多い。一方で、世帯収入の伸び悩みや授業料の高騰で、奨学金を借りなければ進学を果たせない世帯は増えている。

 こうした事態を受け、国は2018年度から、返済不要の給付型奨学金を本格導入する。経済的に特に厳しい学生については、この4月から先行実施する。奨学金制度は本来、家庭の経済事情に左右されることなく進学できるようにするためのものだ。経済的理由での進学断念や、奨学金返済で追い詰められることがないように、国が支援することは歓迎したい。

 大学や自治体、企業などが独自に給付型奨学制度を導入している例もある。県内でも、佐賀大や西九州大に奨学金支給や授業料の減免制度がある。九州龍谷短大(鳥栖市)はこのほど、給付型の奨学金制度を新設した。給付型のさらなる充実に期待したい。

 ただ、給付型は対象者に条件や定員があり、現状ではほとんどの学生が従来の貸与型奨学金に頼らざるを得ないだろう。

 気になる調査結果がある。同機構によると、貸与型の手続き前に返済義務があることを知らなかった学生は45%に上る。遅延督促を受けて初めて返済義務を知ったという回答もあった。学生の8割以上が、卒業後の返済月額や期間さえ認識していなかった。学生側の意識にも問題がありそうだ。

 「奨学金のおかげで大学を卒業できた」「奨学金で大学を卒業したからこそ、いまの職業に就けた」という人は少なくない。どんな意識を持って進学したかが重要になる。なぜ進学したいのか、何のために進学するのか、さらに、卒業後に何を目指すのかなど、親子で話し合うきっかけとしたい。

 学生には、貸与型は学生自らが背負う「借金」であること、また、給付型についても、その財源を負担する国や学校などから、将来の成長への大きな期待を背負っていることを自覚して、これからの学生生活を有意義なものにしてほしい。(田栗祐司)

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