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陸自PKO日報問題

「文民統制」を取り戻せ

2017年03月18日 05時00分

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報問題で、新たな隠ぺいが明らかになった。「破棄した」はずの陸上自衛隊にデータが残っていた上、その事実を隠し続けていたという。稲田朋美防衛相は「現場の責任」を問う構えで、真相解明に向けて特別防衛監察の実施を指示した。

 組織ぐるみの隠ぺいと言われても仕方がないだろう。

 この問題をめぐっては、当初から不自然な説明が繰り返されてきた。ジャーナリストからの情報公開請求には「破棄した」としたが、国会議員から確認が入ると一転して「統合幕僚監部に電子データが残っていた」とあわてて開示した。今度は破棄したはずの陸上自衛隊にデータが残っていたばかりか、その事実を隠し続けていた。しかも、一部報道によると「今さら出せない」とわざわざデータを破棄させたという。

 自らに不都合な事実を国民の目から隠そうとしたのは明らかだ。

 そもそも「破棄した」という説明自体が、いかにも不自然だった。日報は現地に派遣されている隊員の手による1次情報であり、今後の派遣の在り方を考える上でも貴重な記録である。現地の生の声が詰め込まれた1次資料を、そう簡単に破棄するはずもない。

 ましてや、南スーダンの日報は電子データの形で送られてきており、100人以上が共有できる環境が整えられていた。こうした状況を踏まえれば、日報が「ない」とは考えにくかった。

 稲田氏は「(現場の)報告を疑うことはしなかった」と述べていたが、省内をしっかり把握できていないようだ。だが、指導力が不足していたとしても、今回の問題は大臣と現場の連携不足に矮小(わいしょう)化するわけにはいかない。

 というのも、文民統制(シビリアンコントロール)に直接関わる問題だからだ。

 このケースでは、自衛隊を文民、つまり軍人ではない国民の代表のコントロール下に置くという大原則が踏みにじられている。組織ぐるみで文民に正確な情報を提供せず、勝手に隠ぺいし続け、その判断を誤らせたわけだ。

 強力な防衛力を持つ組織が、文民のコントロールを無視し、組織の論理を優先させて恣意(しい)的にふるまえば、国民の生命と安全を危険にさらしかねない。隠ぺいに手を染めた関係者に、その自覚はあるのだろうか。徹底的に明らかにする必要がある。

 稲田氏は特別防衛監察の実施を指示したが、過去のケースでは結果が出るまでに1年近くも要している。いつまでも長引かせる余裕はない。調査に当たる監察官は自衛官や防衛省の事務官であり、身内による調査で公正さがきちんと保たれるのかも気がかりである。

 これまでの国会答弁を見る限り、稲田氏の防衛相としての資質には疑問符がつくのではないか。日報が「戦闘」と記した厳しい現地情勢を率直に認めようとはせず、派遣隊員のリスクを軽視しているようにも見えた。

 日本の安全保障環境は厳しさを増している。核・ミサイル開発を進める北朝鮮は挑発を繰り返し、台頭する中国は海洋進出を強めている。早急に文民統制を取り戻し、安全保障体制の立て直しに着手すべきだ。(古賀史生)

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