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石炭火力発電

2015年05月25日 05時03分

 政府が新たな長期エネルギー需給見通し案で石炭火力発電を重視する姿勢を示したことを受け、企業が石炭火力発電所の新設計画を次々と打ち出している。だが、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を非常に多く排出する石炭火力は、多くの先進国が削減を目指しているエネルギーだ。発展途上国への建設資金援助も含め、石炭に前向きな日本の姿勢は世界の流れに逆行している。年末のパリの会議で合意を目指す新たな国際的な温暖化対策交渉での孤立を避けるためにも、石炭重視の政策は早急に見直すべきではないか。

 エネルギー基本計画では、石炭を「安定供給性や経済性に優れた重要な電源」と位置づけ、2030年には総発電量の26%を石炭でカバーする計画だ。この数値はCO2排出量が石炭のほぼ半分である天然ガスの27%と同列。12年度の実績では天然ガスは42・5%、石炭は27・6%だから、環境負荷の大きい石炭を温存する一方で、天然ガスを減らし、それを原子力で賄う計画といえる。

 政府方針を受け、民間では石炭火力の新設計画が次々と打ち出されている。環境保護団体の調査によると計画基数は45基、設備容量は2328万キロワットになり、これらがすべて稼働すれば、1億2千万トン超のCO2が排出されると推計される。1990年の日本全体の総排出量の約10%に当たる量だ。

 今、建設された石炭火力発電所は今後、40年以上にわたって大量のCO2を排出する。「50年に排出量を現状から80%減らす」という目標を政府として掲げる一方で、このような政策を進めることは矛盾しないか。温暖化対策の強化が求められる中での石炭重視政策は理解しがたい。

 米国や英国では発電所からのCO2排出規制を強化し、新設の石炭火力発電所は建設できなくなっている。石炭大国の中国でさえ、温暖化対策と大気汚染対策の視点から石炭火力の削減を進めているのだから、資金力も技術力もあり、再生可能エネルギー資源に恵まれた日本が石炭依存を続けることに、国際的な理解は得られないだろう。

 日本の孤立ぶりは途上国への建設援助でも際立っている。世界銀行、北欧諸国や欧州連合(EU)、米国などの公的金融機関は、途上国の石炭火力発電事業への融資を原則中止することを表明。欧米の民間金融機関も同調する例が増えている。

 だが、日本は海外に石炭火力発電技術を輸出することを、経済成長戦略の一つと位置づけ、国際協力銀行(JBIC)は、金額で世界最高レベルの石炭火力関連融資を行っている。日本のこの姿勢が世界的な温暖化対策の足を引っ張ることへの懸念が、オバマ米大統領をはじめ各国首脳や閣僚からも示されている。

 日本が国内での石炭依存からの脱却、政府の資金援助を石炭火力から再生可能エネルギーに振り向けることを鮮明にすれば、産業界にとっての明確なシグナルとなる。国際的な温暖化対策に弾みをつけることにもつながる。福島第一原発事故後、再生可能エネルギーがより注目されたが、最近は何となくしぼみがちではないか。政府は石炭依存ではなく、新たな電源を重視する方向性を示すべきだ。  (小野靖久)

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