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半径5~30キロ圏住民、屋内退避の浸透課題

原子力防災訓練点検

2017年09月06日 09時09分

車いすを使って高齢者の放射線防護対策施設への屋内退避をサポートする消防団員=4日、唐津市高島
車いすを使って高齢者の放射線防護対策施設への屋内退避をサポートする消防団員=4日、唐津市高島

■「すぐに逃げたい」本音

 九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の重大事故に備え、国と佐賀など3県合同で3、4日に実施した原子力総合防災訓練は、「屋内退避」への取り組みも注視された。原子力規制委員会は住民の被ばく防護策として重要性を強調しているが、住民理解は進んでおらず、「すぐに逃げたい」心理もあって浸透はいまひとつ。玄海3号機の来年1月再稼働を控え、現実に即した計画と訓練を求める声が上がる。

 「仮に新規制基準の下での重大事故対策が有効に機能せず、格納容器の破損に至る場合があるとしても、それまでには2日間程度の余裕が見込まれる」。訓練初日に出された首相の緊急事態宣言では、放射性物質の放出が想定される時間的猶予を「2日間」とした。

 電源や注水など多重のバックアップが全て機能しないシナリオを作り、科学的根拠に基づく予測とするが、住民には不安に映る。特に半径5~30キロ圏(UPZ)は、事故発生後は屋内退避し、地域で放射性物質が計測されてから避難する計画。住民からは「逃げたい気持ちを抑えられるのか」との声が漏れた。

 UPZの唐津市原地区から広域避難の訓練をした山本厚さん(67)は「避難指示まで屋内退避と言われても自分で危険を感じたら逃げる」。放射性物質が飛来しない限り避難指示は出ないものの、「こちら向きの風がなくても、原発から放射性物質が漏れたと知ったら危険を感じる」。

 離島ではさらに深刻に受け止める。原発から10キロにある加唐島の漁師中里法安さん(64)は放出予測について「2日も待てるわけがない」とあきれる。「事故だと分かっているのに長時間、屋内にいたら気が狂いそう。山に大きな穴でも掘って、もっと快適に過ごせるシェルターがほしい」と求める。

 悪天候で島外に出られない場合は、学校の体育館内に密閉性の高いテントを設置し、そこに一時退避する。島民自ら設営するが漁師の上田和昭さん(41)は「フィルターの取り付けは誰がどうするのかなど、詳細は決まっていない」と話し、再稼働前までに具体的な手順の整備を訴える。

 悪天候時に一時、施設に退避する訓練があった唐津市の高島。60代男性は「いざ事故があれば自分の船がある人はそれで逃げるだろうし、誰も止められない。行政は『落ち着いて行動を』と呼び掛ける前に、現実に即した対応を考えるべきだ」と注文した。

 規制委の田中俊一委員長は、福島第1原発事故では無理な避難で多数の犠牲者が出た一方、被ばくによる健康影響は過度に心配する必要はないと強調する。事故時はむやみに住民を避難させず「5キロ以遠は屋内退避で様子を見るのが基本」と説明している。

=考・玄海原発再稼働=

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