現在位置:

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

樹木も人も高齢化 ナシ産地に危機感

2017年06月17日 14時30分

苗木をつなぎ合わせるジョイント栽培を取り入れた農園。成育が早く、省力化も図れるため、注目を集めている=伊万里市南波多町
苗木をつなぎ合わせるジョイント栽培を取り入れた農園。成育が早く、省力化も図れるため、注目を集めている=伊万里市南波多町
樹木も人も高齢化 ナシ産地に危機感

 伊万里梨のブランドなどで知られる佐賀県産ナシの結果樹面積が10年間で100ヘクタール、出荷量で2千トン以上減り、産地に危機感が広がっている。果樹の中でも作業負担が大きく、高齢化による離農が急速に進んだことに加え、温暖化や樹木の老朽化で収量が低迷していることも大きく影響している。地元JAや市が若い苗木への改植を奨励するとともに、作業の省力化や高温対策の栽培技術の確立に力を入れ、産地復興を目指している。

 農水省統計によると、結果樹面積は1990年代前半に約550ヘクタールでピークとなり、97年には出荷量1万トン超を達成した。だが、2005年に400ヘクタールを割り、昨年は全盛期の半分以下となる237ヘクタールにまで減った。10アール当たりの収量も10年前は全国平均とほぼ同じ2トン前後だったが、近年は約1・7トンと“低空飛行”で推移し、出荷量の落ち込みに歯止めがかからない状況が続く。

 「盆前のナシと言えば九州産の独壇場だった」。JA伊万里梨部会長の前田丈男さん(66)=同市南波多町=も、初物として珍重され、飛ぶように売れた「伊万里梨」の全盛期を知る一人。桜前線のように九州から東北へと産地が移っていく産地リレーが温暖化傾向で崩れ、関東近郊でも盆前に出荷できる産地が増え、価格面での優位性が揺らぎ始めたことも担い手不足に拍車をかけた。

 ナシは樹齢25年を超えると樹勢が衰え始めるとされ、産地の隆盛を支えてきた木が軒並み老木となった。前田さん自身、改植が必要なのは分かっているが、踏み切るべきか悩み続けている。「価格が安定し、若くて意欲のある人がやれば確実に経営は成り立つ。だが、後継者が決まっていない状況ではどうにも」-。改植した木が成木になるには7~10年かかる。国の補助制度が充実し、伊万里市独自の補助も合わせると費用の手出しはほとんどないが、その間は収益を生み出ささないため、投資に二の足を踏む人も多い。

 県やJA伊万里では、苗木同士をアーチ状に接ぎ木の要領で連結する「ジョイント栽培」を奨励し、伊万里市内では13人が計3ヘクタールで取り組んでいる。標準的な収量を上げられる成園となる期間が5年前後に短縮される上、直線状に着花・着果するため、剪定や受粉、収穫といった作業動線が単純になり、20~30%の省力化になる。市でも改植費用のほか、農地の借り受けなどで規模拡大に対する助成を行っている。JA伊万里の松尾英一果樹特産係長は「後継者育成や新規就農者への経営支援で産地の若返りを図りたい」と話す。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

記事アクセスランキング