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アユ漁解禁

2017年06月19日 05時00分

 「初夏の使者」「清流の女王」ともいわれるアユ。唐津市の玉島川でそのアユ漁が先週、解禁された。釣り人たちが興じるのは「友釣り」である◆エサの藻を確保するために縄張りをつくる習性を利用し、おとりのアユを泳がせ、守るアユが追いだそうと体当たりしてきたところを針に引っかけるという。この繊細な釣りは日本独特のものだそうだ◆玉島川は「日本書紀」や「古事記」に出てくる神功皇后(じんぐうこうごう)が朝鮮半島の新羅(しらぎ)への出兵を決めるのに、アユ釣りで占ったという伝説の舞台。記紀では「年魚(ねんぎょ)」とも表現される。例外を除けば1年で生涯を終えることからきたようだ◆考古学者の故・森浩一さんは『食の体験文化史』で別の見方を披歴している。アユは秋に、川で孵化(ふか)した仔魚(しぎょ)が海に下り、稚魚となって翌春、川を遡上(そじょう)する。古人(いにしえびと)は、1年で生を終えるという点よりも、毎年春に姿を見せ、受け継がれる命のバトンに希望を見いだしたというのである◆古くから食通を喜ばせてきたアユ。作家の立原正秋は、唐津で食べたアユの味を随筆に残している。生のアユを骨ごと薄く輪切りにした「背越し」について、「鮎(あゆ)の繊細な香と蓼(たで)のかぼそい辛さが微妙にとけあってのどを過ぎていった」と記す。生命力あふれるアユは美食家を満足させたようだ。いつまでもアユが上る清流を、と思う。(章)

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