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「野火」が訴えるもの

2015年07月19日 05時00分

 これを見てトラウマ(心的外傷)にしていただきたい-。大岡昇平の小説『野火』を映画化した塚本晋也監督は、誤解も恐れずに言い切った。トラウマになればこそ、戦争への恐怖と嫌悪が強く焼き付く。構想から20年。渾身(こんしん)作にそんな思いを込める◆太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島で、極限状態に置かれた日本兵の狂気を描く。密林の獣道に折り重なる死体、機銃掃射に飛び散る肉片、飢えの極点に至り人肉に手を伸ばす兵士。戦争の不条理さを「これでもか」といわんばかりに描き出した◆銀幕に映るレイテの密林に13年前、現地を訪れた時のことを思い出した。「塩を持っていれば味方でも襲われた」。フィリピンでの従軍経験を持つ男性の言葉は作品の世界そのもの。「白骨街道と呼ばれた獣道があり、千単位の遺骨が残っているはず」。指さす先は熱帯林しか見えなかったが、そこには地獄絵図があった◆試写会で塚本監督は、遺体の検視資料を参考に迫真性にこだわったと語った。原作の世界観を大事にしつつ、戦争を知らない世代へのメッセージ性を強める狙いもある◆「戦争の痛みを知る人が減る一方で、若い人にはふわっと軽く流されそうな危うさがある」。監督の言葉が重い問題提起に聞こえて仕方ない。映画は25日から佐賀市のシアターシエマで上映される。(梶)

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