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天災は忘れた頃にやってくる

2015年06月08日 05時00分

 「天災は忘れた頃にやってくる」はよく知られた警句。災害の間隔があまりに空き過ぎるとその恐ろしさが伝わらない。ある小説で警句の含意をかみしめた◆石黒耀さんの『死都日本』は、「霧島火山群」のカルデラ破局噴火を描いた。大仰なタイトルに目を奪われるが、火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長が「火山学的な記述について非常に正確を期している」と国会で答弁するほど科学的考証を積み上げている◆カルデラ破局噴火は、地下深くのマグマだまりが大爆発を起こし、直径数十キロの範囲で山や陸地などを吹き飛ばす巨大噴火をいう。厚さ数百メートルもの火砕流は全方位へ数百キロに渡って広がる。作中では宮崎、鹿児島まで高温の火砕流に襲われ、壊滅状態となった◆フィクションと片付けてしまえばそれまで。ただ30万年前に実際に起きた現象を現代に当てはめると、思考停止に陥るほどの大惨事になる。「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」(『天災と国防』)とした物理学者の寺田寅彦の言葉が染みる◆数万年周期の災害を過度に恐れては生きていけないが、侮れば痛烈なしっぺ返しを受ける。自分の足元に積み重なった歴史を知り、そこで生きる覚悟を再確認する。火山や地震を伝えるニュースの多さを思う時、その心構えの大切さを痛感する。(梶)

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