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備える支える(5)医療機関の被災

=備える支える 熊本佐賀 災害弱者の視点=

2017年04月20日 08時36分

災害弱者対策では長期化する避難生活をどう支えるかという視点も重要になる=熊本県西原村の仮設住宅
災害弱者対策では長期化する避難生活をどう支えるかという視点も重要になる=熊本県西原村の仮設住宅

■弱者配慮 みんなに恩恵

 熊本地震は、命を守る砦(とりで)になる医療機関にも打撃を与えた。熊本県内の半数以上に当たる病院や診療所など約1300施設が何らかの被害に遭った。施設の被害が限定的でも、断水や停電でライフラインが断たれ、治療が困難になった現場もあった。

 熊本地震では、人工透析ができる93医療施設のうち、最も多いときで27施設が断水などの影響で対応できなくなった。週3回の透析が必要な今井政敏さん(63)=熊本市=は昨年4月16日の本震でかかりつけの病院が断水したため、玉名市の施設に向かった。「道路が所々で寸断され、車で片道1時間の道のりが4時間かかった。1日がかりで往復し、透析できた時間は普段の3分の1。頭がズキズキしてきつかった」

 慢性的な腎臓病患者らに必要な人工透析。週に3回程度、4~6時間かけて血液を装置に通し不要な水分や老廃物を除去する。1回当たり100リットル以上の水が必要になってくるという。

 自衛隊や熊本県外の自治体からも給水車が現地入りしたが、限られた水を共有するため、4月中は時間を短縮して透析を受ける日々が続いた。「日にちの間隔が空くと、尿毒症になって意識が混濁してしまう。ただただ、命をつないだという状況でしたね」

■生命線

 佐賀県には約2500人の透析患者がいる。NPO法人「県腎臓病協議会」は10年ほど前から、災害時の透析施設の稼働状況を伝えるメールを登録制で配信している。「避難できたとしても、そこから透析ができる施設を確保できるかどうかが生命線」。協議会の常務理事で、自身も透析を受ける佐藤博通さん(62)=佐賀市=は熊本の事例を受け、あらためて実感する。

 透析は患者に限らず、命綱になる。がれきに挟まれて筋肉が圧迫され、救出後に毒素が全身に回って死に至るケースがある「クラッシュ症候群」の治療にも緊急的に必要となる。

 県は対策マニュアルを策定しており、災害時に透析が可能な施設を調整するための連携体制をまとめている。熊本地震を受け、連絡手順の具体化などを改訂中で、水道事業者へ水の優先提供の依頼もした。

■支える視点

 熊本地震の直接的な死者は50人、避難生活の身体的負担などに伴う関連死は4月13日現在で172人に上る。大規模災害では、避難生活が長期化した場合、どう支えていくかという視点も欠かせない。

 熊本県の15市町村は昨秋、地域支え合いセンターを設置した。生活支援相談員が仮設住宅などを巡回し、専門機関と連携しながら心のケアや住宅を再建するための支援に当たっている。

 佐賀県は3月に地域防災計画を修正し、避難所でのプライバシーや空調機器の確保に自治体が努めることなどを盛り込んだ。さまざまな団体との協力関係づくりも進め、前年度は木造仮設住宅の提供に関する協定など7件を加えた。「書面だけでなく、実感の伴った内容にしなければ」。県消防防災課副課長の副島尚史さん(48)はこう強調し、実効性を高めるために具体的な協議を進める考えだ。

 高齢者や障害者、外国人ら「災害弱者」への配慮は、きめ細やかな備えにつながり、被災者全体にプラスに働いてくる。教訓を共有し、改善の手掛かりにしたい。

(おわり)

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