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備える支える(4)発達障害者の苦境

特性考慮の防災これから <備える支える 熊本佐賀 災害弱者の視点>

2017年04月19日 09時10分

発達障害の子どもの特性を一覧できる緊急時サポートシートを手にする樋口陵子さん=三養基郡みやき町の中原特別支援学校
発達障害の子どもの特性を一覧できる緊急時サポートシートを手にする樋口陵子さん=三養基郡みやき町の中原特別支援学校

<熊本県内に3カ所ある「発達障がい者支援センター」には、熊本地震が起きた昨年4月14日から6月までに、計406件の相談が寄せられた。発達障害のある人の中には、「大勢で過ごす避難所生活に耐えられない」という困難に直面し、車中泊でしのいだり知人宅に身を寄せたりしたケースも多かった。>

 本震から日が浅い熊本市内の体育館。避難してきた人たちを対象にエコノミークラス症候群を防ぐ体操が始まると、一人の女性(27)が激しい頭痛と吐き気に襲われた。女性は高機能自閉症で、知覚が過敏だった。体育館に反響する音楽に耐えかね、避難所の運営者に「やめて」と訴えたが、音楽はやまなかった。

■不安拭えず

 発達障害は自閉症や高機能自閉症、アスペルガー症候群などの総称で、包括して「自閉症スペクトラム障害」とも呼ばれる。熊本では避難所に身を寄せるのを敬遠したり、炊き出しの行列に並べなかったりする人がいて、ストレスで健康を損なうケースもあった。

 障害の特性に気づいてもらえないと、配慮は行き届かない。熊本県や熊本市が運営する支援センターは、避難所の運営者に説明する一方、落ち着くことができる個別の空間を設けるように要請して回った。それでも、一部からは難色を示す声が漏れた。「こんな大変なときに無理だ」

 公的な支援を象徴する避難所に頼れない。そんな中、同じ境遇にある人や家族同士、協力して避難生活を乗り切ったケースがあった。発達障害の子どもを熊本県外の実家に預けたり、付き合いのある家族同士で子どもの世話をしたり生活物資を融通し合ったり…。くだんの女性も自助グループの仲間の家に身を寄せ、落ち着きを取り戻した。

 佐賀県特別支援学校知的障害教育校PTA連合会会長の樋口陵子さん(46)はこうした避難の実態について、熊本県の連合会を通じて知った。「避難所よりも、こういうコミュニティーの方が楽だったという声も聞いた。これができれば心強い。ただ、誰もがそうできるかというと…」。佐賀での自然災害を想定した場合、不安は拭えない。

■具体的配慮を

 発達障害のある人や家族が「自助」や「共助」を余儀なくされた実態に対し、行政などによる「公助」をどう充実させるか。熊本市は地震を教訓に、市地域防災計画の素案に当事者に情報を伝える上での注意点や、落ち着ける場所を確保するといった具体的な配慮を新たに加えた。これまでは障害の特性の列記にとどまっていたという。

 市発達障がい支援センター所長の幅孝行さん(66)は「障害への地域の理解が進んでいなかったという反省から、啓発活動にも力を入れている」と話す。

 樋口さんら佐賀県のPTA連合会は昨年12月、子どもの特性を記し、携帯できる個別の「緊急時サポートシート」を作成した。これを見た人が誰でも支援できるように、名前や連絡先に加え、パニックの前兆や対処法を記入する欄も設けたA4判1枚の用紙だ。

 県内自治体では、発達障害者の防災を目的にした備えを充実させる動きは鈍い。「シートは道具にすぎないけれど、充実に向けた手掛かりになれば」。樋口さんの願いだ。

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